石油流通ビジネス最前線  「変わるビジネス 変わるシステム」

第一回 石油流通システムの特殊性と課題


読者の多くはSS運営企業の方が多いと思われますが、一概に石油流通ビジネスといっても、元売りからリテールの販売店SSまで立場により石油流通ビジネスの業態は非常に多様です。
ですから、石油流通企業がそれぞれの立場で抱えている「課題」も非常に多様です。
ソリューションという言葉を直訳すると「課題」ということになります。
今回、依頼により「石油流通ビジネス最前線」(変わるビジネス・変わるシステム)と題して石油流通ビジネス最前線おけるシステムをテーマにして原稿を書くことになりました。
石油流通システムといっても、現在多くのSSで運用されている請求書作成を中心とする勘定系処理のPOSシステムだけではありません。最近では主に特約店業務や中間流通業で使用される卸・直売部門システムに注目が集まっています。
石油業界の直売システムについては専用ソリューションも少なく、それぞれの企業が独自に開発したり汎用システムのカスタマイズなどで対応しているケースが多いため今迄あまり公開されたことがないわけですが、我々は元売り、フリート系大手ディーラー各社、系列大手特約店各社などの直売・卸売システム構築を進めており、そのキャリアを元に現在の課題と対応について可能な限り公開したいと考えています。ここに記載するシステムの仕様についてはすでに基本的に実務稼働を開始している部分がほとんどです。
今回は連載のスタートですから今後のテーマにの概要についての御説明をそして個別的内容については各月毎に説明させていただきます。


◎石油流通ビジネス、最前線のシステム課題

・暫定税率問題で改めて露呈した石油流通システムの特殊性と課題

ご承知の通り日本の石油流通は税制面からみても特異です。
昨年の暫定税率問題では特別徴収義務者に課せられる軽油税と申告に関する課題が表面化しました。
すでにご承知とは思いますが復習も兼ねてお読みください。
消費地課税を原則とする地方税である「軽油税」は特徴義務者として認可を受けた販売業者(一般的には特約店)が納税義務をおっているわけですが、消費者から見たら同じように見える販売業者でも特約店と販売店(サブ店)では全く課税方法が異なることから在庫商品などの取り扱いに起因して不公平が発生したため混乱を招くことになったわけです。ご承知の通り特別徴収義務者(主に特約店)に課せられている納税帳票作成業務は非常に手の込んだ作業なのですが実際には1%の流通欠減補助と納税額の3%弱を加えた合計3~4%が還付手数料として雑収入扱いとなるため特徴業者の流通マージンとしてすでに収益として織り込まれています。
特に、軽油流通に関する欠減補助に関しては「商流データ(伝票上の流通)」など実際の「物流」を伴わない流通にも適用されているわけですから、丸ごと収益となりキャッシュバックされるというメリットにもなるわけで特約店とサブ店での軽油ビジネスにおける大きな収益格差となっています。
ご承知の通り、国税の「蔵出し税」である「揮発油税」は元売りが納税者であり重複してさらに消費税が課せられるダブル課税(TAXonTAX)となっており現在も問題となっています。
軽油税は軽油税額を抜いた部分に対して消費税が課税されているわけで、このように変則的な税制の商品を一度に取り扱う商売はあまり類がありません。したがって一般的に汎用債権管理システムで請求書発行を行うとしたら変則的な課税手法が必要となりますので事実上汎用システムでの運用は不可能です。元売り系計算センターや石油流通専用システムを利用しなくてはならない石油流通システムの大きな特殊性がここにあります。実は石油流通システムの特殊性は他にも多くあるわけですが、税制が特殊であることに起因するシステムの特殊性をまず頭に入れておく必要があります。
補足ですが、最近、軽油に関する不良債権が発生した場合の「軽油税還付請求」についてのお問い合わせを受けることが増えてきました。これは特別徴収義務者のみが可能な申請であることも覚えておく必要があります。また、軽油に関する取引で消費者との決済条件が手形などで仕入れ決済に対する被りが発生する場合には所轄の納税管理事務所に「軽油税徴収猶予申告」を提出することで納税時期をずらすことなども可能です。これにより軽油取引にかかる増加運転資金に対する対応が可能となります。現下のような資金がタイトな時期には特別徴収義務者にとっては大変便利な制度ですから是非活用すべきです。
軽油税特別徴収義務者専用の納税管理システム「D-TAX」はこれらの課題を一気に解決するべく開発された専用ソリューションであり、石油流通管理の基幹業務を統合的に管理できる「ペトロマスターEX」の一つの部分ユニットとして組み込まれています。
以上のようにSS店頭専用の「POSシステム」と「直売システム」は同じ石油流通ソリューションであっても機能や仕様が大幅に異なります。
ここでは、多くの特約店や中間流通ディーラーが直面している卸売・直売流通システムの課題について説明します。


・販売先に対するリアルタイムな「与信管理の徹底」

原油価格の乱高下により与信限度額の伸縮が激しくなっています。現下の不況で金融情勢がタイトになるにつれ販売先に対する「与信限度額管理」の必要性が高まっています。
受注時データ受信時に与信限度を確認して、その受注データを受けてもよいか、限度額に達している場合には取引先名対してコーション(注意予告)を発信。特に、COD(キャッシュオンデリバリー)などでは、キャッシュフローを有効に使い資金効率の向上を目指すため、金融機関への振込入金のタイミングとシステムへの入金処理のタイムラグをシステム的にいかに短縮することができるかの工夫もポイントになっています。
理想としては、当然リアルタイム処理が前提です。最近ではEDI(電子商取引)システムの導入により、取引先との受発注データとネットバンキングのデータをリアルタイムにリンク照合させながらスピーディーに対応する手法も検討されています。与信限度額管理については、当然売りに関するだけでなく、仕入(買い)管理も同時に行えるような仕様となっています。与信限度額オーバーなどによる責任者の出荷稟議決定に関してもWEB上のネットワークにより、常に稟議対応ができるような仕様としておく必要があります。


・「新仕切り体系」に対応する「直売システム」の対応

「新仕切り体系」への対応などにより、特約店や商社の直売・卸売流通業務は今迄とは異なる煩雑な単価設定による流通処理の対応を求められており単価管理業務が煩雑化しています。
短期間で変化する「油種別単価マスタリスト設定」、その内容については「期間設定」や「出荷施設条件」、「倉取り」や「届け」、「施設渡し」等の「流通区分」によって変動する「流通単価処理」、さらには、「届け先別の運賃計算」、「ボリュームインセンティブの条件設定」、「出荷基地や地域別」に異なる単価条件対応など非常に多様な単価条件設定が求められているわけです。
これらの細分化された条件を体系化し実務の販売単価として「単価マスタリスト」に正確にしかもスピーディーに反映させるためにはどのような手法があるかが大きな課題となっています。
仕入れ(買い)側である一般SS業者ではパターンも限られていますから流通管理に関する認識が薄いわけですが、流通量が多い特約店卸売、中間流通業者では「商流データ」、「物流データ」、「勘定系データ」、「情報系データ」が複雑に絡み合うためシステムによる流通の自動仕分けができなければ価格対応が不能となるわけです。条件設定のパターンが多くなることで既存システムの機能だけでは流通対応が不可能となり卸売や直売戦略に苦慮している特約店が増えています。


・WEBを活用したEDI(電子商取引)による受注業務省力化

現在では、ほとんどの元売りの受発注業務はインターネットによる発注システムにより自動化されています。異業種などではすでにEDI(電子商取引)による受発注業務の省力化はかなりの速度で進行しているわけですが、石油流通業界における直売最前線ではどうでしょうか?これだけIT化が進んでいるにも関わらず、ほとんどの特約店では販売店、直売ユーザーとの受注業務のやり取りを今でも電話やFAXといった時間と手間とコストのかかる手作業で行っているのが現実です。受発注業務は担当者にとって大きな業務負担となっています。最近の石油流通ビジネスは「セルフ化」などにより単純化するSS店頭ビジネスをよそに、直売部門の流通とりわけ高収益な「工業用潤滑油」の販売対策や変化の激しい価格変動さらに伸縮が激しい「与信限度額管理」まで管理業務は流動的で専門化され複雑な課題も山積しています。手作業によるデータ処理ではミスも発生しやすく金額もかさむので絶対に見逃せません。
これらの課題を一気に解決する日本の石油流通ビジネスに特化したASPによるWEB受注石油専用システムがすでに稼働を開始しています。
これらの受注システムはASPであることから「月次課金」による運用が可能であるため、導入コストがかからず、しかもサーバーメンテナンスもサポートセンターで行うため不要であることから急速に普及することが予想されている。


・石油流通ビジネスにおける基幹業務統合系ERPシステム構築

複数の販売店を傘下に持つ特約店では、多くの場合、SS運営オペレーションのPOSシステムと直売部門システムは別の構成となっているはずです。指定計算センターなどによる既存システムの応用だけでは今後予測される複雑な流通対応は不可能といっても過言ではありません。
一つの石油流通企業を経営するためには、社内的にいろいろな管理業務が存在しているわけですが、大手ディラーなどではそれらの業務を基幹的に統合して一つのデータベースで管理することで劇的に社内管理コストを軽減することができる「基幹業務統合ERP系ソリューション」が稼働を開始しています。
現在元売りや一部スーパーディラーなどで稼働中のSAPなどのシステムですと十億円単位の膨大な導入経費がかかるわけですが、同一のデータベースエンジンを採用した日本の石油流通と特殊な税制に対応した、低価格で高機能な石油流通専用ソリューションもすでに発売されています。
軽油税納税管理システムは基幹業務統合系ERPシステムの一部のプログラムユニットとして存在しているわけです。
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