石油流通ビジネス最前線  「変わるビジネス 変わるシステム」

第二回 石油流通ビジネスにおける「与信限度額管理」の実務


ひと昔前は、ある程度の規模のSS特約店では、「電算室」と呼ばれる部署が設置され「オフィスコンピュータ(オフコン)」を運用していた時代がありました。
それが今日では、「情報システム部」などに名称が変わり、SS店頭販売用のPOS売り掛けシステムとは別の「石油卸・直売システム」を運用するSS特約店が増えています。


石油流通の最前線で稼働中の「卸・直売専用」システム
最近の直売システムはウィンドウズなどを中心とするオープン系システムを採用しており、システムの導入及び運用コストが大幅に削減されています。
またそれに伴いサーバーを介した社内LANや広域WANによるネットワーク対応によるシステム運用が増えているのはご承知のとおりです。後方の指定計算センターを介した「SSデータ処理」の連携も容易になりました。
パソコンシステムの普及により「石油システム」は本当に便利になりました。では、石油流通業で運用されている最新の「卸・直売システム」とは具体的にどのような機能を持っているのでしょうか。今回は「与信限度額管理」を中心に石油流通業が現在どのような課題を抱えているのか、現場の最新事例を説明します。


伸縮する与信限度額への対応
与信限度額とは、一般的には「売掛金が発生する取引における回収可能な金額の枠」を示します。
一般的なビジネスでは与信限度額は取引相手を調査して決定し、あくまで目安でありまた、与信限度額は取引先にわからないようにしておく事が多いわけです。
ですからSS店頭などの法人客などに対するリテール販売では与信限度額の設定には、限度額までは売掛金を気にせずに売り込めるというメリットがある反面、限度額を超えそうだからと、販売にブレーキがかかってしまうというデメリットもあるわけです。
与信限度額内だと安心していると、取引先の経営状態が悪化していて、支払いが滞ってしまったという場合があるので注意が必要です。昨今の日本の石油流通ビジネスの卸・直売流通部門では商社などの業転流通を中心に「与信限度額管理」は「販売」、「仕入れ」共にかなりオープンにそしてドライに取り扱われています。


石油流通ビジネスの「掛け売り」における「与信限度額管理」
石油流通ビジネスにおける「与信限度額管理」を行うためには当然のことながら、その時点でのリアルタイムな売掛残高が受注時に即座に把握できることが前提となります。
更に、もし今回これを受注すると売掛金の総額がいくらになり、与信限度額以内であるかどうかの確認がその場で判定できなくてはなりません。
ですから計算センターなどに債権管理を依存していては多くの場合、リアルタイムな受注対応は不可能だということになるわけです。現在、業転流通などで「COD(キャッシュオンデリバリー=現金振込と同時の取引)」が多いのは実はこれら債権管理システムの対応不備によるものだという見解もあります。
現実の問題として、SS特約店が取引先から注文を一度受けてから「与信限度額を超過しているため、納品不可能です」という対応をするのは販売店や直売相手のビジネスとしてかなり難しいことだと思います。
そこで、金額の張る卸売りや直売などの取引先に対して、どのようにしたらスピーディかつ、円滑に与信限度額管理を行う事が出来るのかが大きな課題となってきます。
次に、それらの課題を解決するためのシステムによる手法を提示します。

①「直売システムによる具体的な対応」…限度額オーバーの告知
それらの対応としては、リアルタイムな与信限度額管理機能を搭載した受注システムが既に稼働しています、これらのシステムはあらかじめ設定された「与信限度額」に対し、受注データの入力時に「警告」マークが自動表示され、与信限度額の超過が告知されます(図1)
「図1」は受注データ入力と同時に表示される「警告マーク」(!)です。入力担当者はこれにより即時に与信限度額オーバーを認知しリアルタイムな債権管理情報により即時にお客様に告知できることがポイントです。

②「Webによる『EDI受発注システム』での対応」…自動制御
更に、最近では元売りのオーダーシステムと同レベルの機能を保有する最新の「EDI(インターネットを活用した電子商取引)受発注システム」が大手SS特約店や商社などで稼働を開始しています。
「EDI受発注システム」は販売店や直売ユーザーに対してIDとパスワードを発行し、発注者が注文内容を入力することでデータ再入力による入力ミスや入力作業自体を省力化できる最新の受発注システムです。このシステムでは、限度額オーバーの告知方法をいくつかの手法で知らせることができます。
例えば、以下は発注データ読込時の伝票処理画面の一部です(図2)。
これらのシステムでは、インターネットの受注専用サイトから、販売店や直売ユーザーなどのお客様がオーダー内容を直接入力し、直売部門は、入力された受注データをそのまま売上データにコンバート(変換)します。
商流などの場合は、元売の発注データにもコンバートし、更に運送会社に対する配送指示や、注文先への受注確認データの送信など、受発注に関する全ての業務を一元的に、瞬時に処理できます。
直売部門の煩雑な業務を圧倒的に省力化することで、直売流通ビジネスの業務効率を劇的に向上させられます。このシステムでは、もし「与信限度額」を超過した場合、受注時に認識し、複数の手法で対応できます。例えば電話で会話をしなくても、「受注保留」の告知や、メッセージの発信などのシステムによる自動対応などが可能です。

③「与信限度額管理」のポイント
現実の問題として、直売部門では、長期取引のある販売店や大手直売ユーザーなど、一概に事務的に処理できない取引先が多いのも事実です。
システムによる情報取得とその対応では、いかに柔軟に機動的な運用を行うかがポイントです。また、販売店への価格対策を立てるためには、「新仕切体系」の対応とともに「届け」「蔵取り」「施設渡し」など、流通区分の明確化や、各種条件等を細分化して処理できるのが直売システムの大きな特徴です。


「COD(キャッシュオンデリバリー=現金振込と同時の取引)」の課題
「COD」による取引に関しては、現金取引であるので与信限度と直接関係がないように思われますが、実は、如何にスピーディーに入金データを確認し、債権の総額と照合しながら、速やかに出荷できるかというのも大きな課題となります。
そのためには、金融機関等のネットバンキングからの入金情報をシステム的に如何に迅速に取り込めるかが問題となります。このことにより、運転資金の回転率が大幅に向上するからです。


前受け金取引(先払い取引)
商社取引などでは、「前受け金取引(先払い取引)」が存在します。預け金額が一定残高になった時点での販売先に対する、「残高告知」「残高確認」「入金要請」などの必要性が生じます。この作業も自動化による常にリアルタイムな管理が必要です。
このように、最新の「直売システム」では「与信限度額管理」は既に必須の機能となっています。そして、「EDI受発注システム」と連動する仕様が最も有効な手法です。
これらのシステムは既に具現化され、元売や有力企業で稼働しています。このように石油流通ビジネスの直売部門は、アナログの手作業をシステム化することで、流通データ量が膨大に増えたとしても、処理する作業は、非常に少ない人員で簡単に対応できるわけです。
以上で、先進的な企業の収益構造が「ITソリューション」で確立されていることを理解して頂けたことと思います。
次回は石油流通ビジネスにおける「EDI(電子商取引)システム」の実際について説明します。
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