石油流通ビジネス最前線  「変わるビジネス 変わるシステム」

第六回 石油流通ビジネスにおける「システム構築と人的課題」


石油ビジネスとコンピューター環境。よく観察してみると石油ビジネスの過去の推移とこれからの動きなども予測されてきます。時代とともに変わる石油ビジネス、そして、それに伴い変わるシステム。これからの石油流通管理業務に必須となるビジネスソリューションとはどのようなものなのでしょう。
今回は、難しい話の「中休み」として、システムとしての技術や機能だけでなく、オープン系システムへの移行に関するポイントから具体的構築作業などシステム構築段階から運用開始にいたるまで、実際の企業においてシステム構築の際に問題となる「人的資質」の課題に至るまで、特に現場で注意すべきポイントを中心に説明します。


【石油業界のシステム黎明期から現状の課題】

石油流通ビジネスに「コンピューター」による請求書発行機能が導入されたのは、他の産業よりも比較的早い時期でした。
それまでは、売上明細を手書きで記入してから請求書を作成するという煩雑な手作業に依存していた石油業界にとってまさに「画期的」な出来事でした。
この頃私は中学生であったと記憶しています。母が夜遅くまで請求書作成に追われていました。
当時はまだコピー機も普及していない時代でカーボンによる請求書の複写作成などもあったように記憶しています。
そして、コピー機による元帳複写による「請求書発行」へ、その後、ようやく時代は「マークシートリーダー」の時代へ入りました。
同時にこの頃から「元売計算センター」への委託計算代行が開始されたわけです。
当時はSSにコンピューターがあるわけではなくて、マークシートという、ちょうど現在の競馬場の馬券投票のような用紙に鉛筆で、数字の消しこみマークで売り上げデータ等を記入し、そのマークシートを「計算センター」に送付し、請求書の作成発行まで依頼していたというわけです。
昔のSSビジネスをご存じの方にとっては懐かしい作業として思い出されるでしょう。
その後、SS店頭POSシステムによるデータ転送が開始されました。
これにより、「マークシート」への手入力作業もなくなりSS店頭業務は大変楽な時代になったわけです。
当時は、大手ディーラーなどでは計算センターなどと同等の機能を保有する「自社オフコン(オフィスコンピューター)」の設置なども進み「電算室」や「コンピュータールーム」などと名付けた部屋で、オフコン専門スタッフによる専用開発言語(COBOLなど)を中心とした管理業務が永く行われて来ました。
ここで、よく考えてみましょう。私も石油流通ビジネスの経営者でしたのでよくわかります。
あの頃のシステムは構築から実務運用に至るまで、企業として「システム担当者」の力量に依存する比率が非常に高いものであったように思います。
このことは、担当者による「仕事の抱え込み」や占有化などにより逆に企業にとって成長の妨げとなることさえありました。
現在でも「電算室」的な組織を完全に捨てきれず無駄なコストとして悩んでいる経営者の方も多いわけです。
同じコンピューターとは言っても、オフコン世代とオープン系の時代では知識も技術もかなり異なります。
思い切った「切り替え」が必要なのですが、経営者としては、なかなか思うに任せないジレンマとなっているのが現実のようです。
そこで、コンピューターに関する維持管理コストを一気に、しかも圧倒的に削減するための手法を公開します。


【ときはいま、オフコンの時代からオープン系の時代へ大移行中】

少し前の時代までは(オフィスコンピューター)いわゆるオフコン)を基幹システムとしたものが多くの石油流通企業で利用されていましたが、現在 オフコン系で新規にシステム構築される例は皆無に近いと思われます。
主な要因としては、メール・ワープロ・表計算・インターネットなどを利用するために多くの企業でパソコンが導入され、ユーザー自身がパソコンの便利さや 画面操作・入力のやり易さに慣れてきた事がその要因でしょう。
しかし、何より大きな課題としては、オフコンはシステムとして開発経費や維持管理にお金がかかりすぎます。それにもかかわらず いまだに過去作成されたオフコン系のシステムが存在しているケースも多く、パソコンとの間でのデータ転送作業に時間や経費が掛かったり無駄な作業が多発している企業なども多数あります。
そのために本来必要でない事務処理作業なども多いため、隠れたコスト増を招いているわけです。そのため、石油業界でも旧態然とした「オフコン系システム」から時代のニーズに即したオープン系へのシステムの乗せ換えが現在急ピッチで進んでいます。
オープン系ハードはPC(パソコン)の例を見ればわかるように 世界中で大量に生産されている為、毎年急速に単価が低下しており、生産数が極めて少ないオフコン系とはハード機器の製造コスト自体がまったく異なります。
特に問題となるのはオフコンの独自OS上で開発されたプログラムが他社の機器などではまったく動かない為、ソフト乗り換え時には事実上それまでのソフトウェア資産をすべて破棄することとなります。
オープン系の場合は基本的にソフトとハードは別物であり、ハードメーカーに拘束される部分が極めて少ないためバージョンアップやウィンドウズなどのOSの変化やバージョンアップなどにも対応することができるわけです。
一方、オフコン系システムは世間からどんどん姿を消しつつ有り、製造元のメーカーでさえ、自社技術者をオープン系にどんどん移籍させているのが現状なのです。
それに伴い、石油流通業界ソリュションシステムもコストのかかるオフコン系システムからこれからの開発環境と維持管理コストを考慮して、現在オープン系システムへの移行が急速に進行しているというわけです。


【まだ、オフコンに依存して無駄なお金を使いますか?】

「オフコン」と「オープン系システム」の「機能格差」や運用コストに関する基本的な知識は先に述べたとおりなのですが、それでは、実際にどの程度の格差があるのか興味があるところでしょう。
一概には決めつけられませんが、同一程度の機能のプログラム内容だと仮定すると、現状ではソフトウェア部分だけで確実に「半額以下」まで価格差がついています。さらに、データ活用の可能性については圧倒的に「オープン系」が有利でこれは、とても比較にもなりません。
次に、業務処理の省力化とスピートアップについても、ネットワーク対応などにより支店間情報処理も含め可能、不可能なので「比較になりません」。
各種帳票作成などについては、システム会社などに依存せず、すべて自社対応可能ですから、コストもスピードも比較にはなりません。
オフコンでは不可能なリアルタイムな「在庫管理」から会計処理連動まで「オープン系システム」の機能が劣っている部分は皆無といえるでしょう。ハードウェア(コンピュータ機器)に関して言えば、一般的な汎用パソコンで動く「オープン系」は価格面からも機能面からも絶対的な優位性があります。
「オフコン」で専用機を使っていたら保守面のコストや機械的な故障などが発生したら場合の時間と予算面の両面からも非常にリスクとコストが高いわけです。ですから、オフコンは出来るだけ速やかにオープン系に置き換える必要があるわけです。


【オープン系システム移行に際しての留意点】

今迄オフコンに依存していた企業は「オープン系」へ移行、そして従来、元売り計算センター等に計算委託代行をしていた企業などでも基幹統合系による自社システム構築で経営管理のコストダウンを実現している有力企業が急速に増えています。
しかし、現況では石油流通業界向けのオープン系システムに関してはメーカー数が限られています。理由としては、元売り系カードのデータ転送処理のためのファイルレイアウト設定に関して課題があり、元売り毎に個別的な対応が必要となることなどが原因と考えられます。
システムに関して比較的オープンで柔軟な考え方の外資系に対して、一部民族系企業では個別的に異なる対応を迫られることもありますから、事前の打ち合わせが大切です。
実績のあるソリューションを選択することがその後の円滑な構築作業から運用につながります。
オープン系では、一般的なパソコンを活用することを前提としているため、ハード機器類の汎用性が非常に高く、導入価格が劇的に下がります。
「機能は高く、価格は安く」という理想が実現するわけです。
最初に必要機材を選択確認して予算を確定することも可能です。ところで、システム構築に関する成否の条件として、実は「人的な課題」が大きな要素となっていますので特に留意しなくてはなりません。


【基幹業務統合系システム構築に向けてのポイント】

改めてERPとは、「Enterprise Resource Planning」の頭文字をとったもので、直訳すると企業の経営資源計画となります。
経営資源の最適化を実現するためのシステム。日本語に訳すと基幹統合系業務パッケージとなります。
この言葉が示している通り、企業内にある基幹業務(会計、販売、在庫・購買、生産、人事・給与)で必要な情報をデータベースにより統合的に一元的に管理する仕組みです。
システムのオープン化に伴い、日本でもすでに国内の大手企業を中心に国内の石油流通ビジネスの風土に適合した基幹業務統合系システム(ERP)の構築と運用が開始されています。
石油流通に特化したERPソリューションに関する具体的な内容について、以前、説明させていただきましたが、一体システム構築と「人的課題」がどのような形で影響してくるのか、我々の現場経験ではコンピューターやビジネスソリューションというものは、そのイメージとは裏腹に実に「ヒューマン」で現実的課題を抱えているといえるからです。


【業務改善はシステムと人とのバランスが大切】

ビジネスの環境は常に変化しています。そして「オフコン」と「オープン系システム」では同じコンピューターとはいえ、知識や技術も異なります。
さらにERPソリューションともなると内部構造も概念も複雑です。しかし、なにも臆することはありません。
年齢やキャリアに関係なく、何度か前提となる打ち合わせを重ねることで自然に概念的なものが頭の中で構成されてきます。
特に、「オープン系システム」ではウィンドウズが中心となっていますから、インターネットや「エクセル」や「ワード」など簡単なパソコンソフトなどを使える若手社員にとっては非常に受け入れやすくてしかも簡単なはずです。
問題はむしろオフコン世代の技術者であるともいえます。ある意味、キャリアと知識と技術の「逆転現象」が発生するわけです。
いままで社内でコンピューターといえば「あの人」と位置付けられてきた偉いスタッフよりも、最近入社した若手社員でパソコンが得意といったスタッフに圧倒的な活躍の場が拡大してくることになるわけです。
実は、そんな時の「人間関係」の「バランス感覚」が大切です。ベテランの顔を潰すことなくいかに円滑に若手に業務を移譲していくかが大きな課題となります。
賢明な読者諸兄ならすでにご理解頂けたと思いますが、システム構築や業務改善の最大の目的は、「業務省力化」、「業務生産性の向上」、「合理化と人員削減」などによる企業収益の向上にあるわけですが、企業にとっての「合理化」とは社員やスタッフにとっては「リストラ」と受け取られるわけです。
さらに、「業務領域」とか「職務権限」なども、現在までの社内的慣習などもすべて破棄して見直すことが多くなります。
とにかく、企業内にある基幹業務部門(会計、販売、在庫・購買、生産、人事・給与)のデータをすべて一元的にデータベースで統合管理することになるわけですから、今迄の「部」とか「課」とか部長、課長、係長などといった縦と横の企業組織までも根底から見直すことになるわけです。
ハッキリ言いますとパソコンが使えない中間管理職は企業にとって不要となります。約20年前、アメリカで発生した「ホワイトカラーの失職=リストラ」は米国企業におけるERPの普及によりさらに一気に進行したといわれています。
逆に言いますと当時の米国経済はERPなどを中心とするITの進化による経営合理化により企業収益が蘇り景気回復が実現したわけですが、今日の日本でも20年たって、同様のことが発生しています。
システムによる省力化や合理化は当然リストラへと続きますから、社内的には「抵抗勢力」も出てくるわけですが、そのような人的課題を克服できた企業のみが「勝ち組」として再生に成功し、それらを克服できない企業は「負け組」として淘汰されていくという現実については誰も否定できないはずです。


【システムによる業務改善と経営者の企業統治能力】

企業の業務管理を改めて見直し、システムによる業務改善を図ろうとした場合、ほとんどの企業で改善の先頭に立つシステム担当者と「抵抗勢力」との間に軋轢が発生します。
これは、我々だけでなく、ERPソリューションベンダーと呼ばれる開発企業がクライアント企業でソリューション構築を図るときに必ずといってもいいほどの確率で発生する最初の課題であり、ハードルですから、驚くことはありません。
しかし、其々の企業や経営者にとっては初めての経験であることも多いわけですから大変です。
政治でも、企業経営でも「改革」というものには、必ず現在の体制を維持し変化を嫌う官僚的「抵抗勢力」との「闘い」からスタートを切ることもあるわけです。
しかし、開発という局面から見ますと「逆説的な見解」などから新たな考え方や技術などが生まれてくるケースも多いわけですから「抵抗勢力=すべて抵抗」というわけでもありません。
ここではやはり、企業のシステムエンジニアやソリューションベンダーの力量が問われます。
しかし、この段階では、なんといってもまず経営者自身によるコーポレートガバナンス(企業統治)と決断力が問われることになるというわけです。


「人は石垣、人は城」 あくまでも人が命の業務改善

人材は企業の資産であり、力でもあり、宝です。
しかし、企業として特定の人間に頼りすぎるのは経営リスクを高めます。個人が特定の業務を抱え込むことなく、どこまでも業務を平準化することで、「誰にでもわかりやすい」業務体系を作り上げることが大切です。
ハードウェアやビジネスツールである「ソフトウェア」はあくまでも目的を達成するためのツールであると考えたらどうでしょう。
肩の力を抜いてコンピューターやソフトウェアとは決して敵対せずに協調することがシステム構築成功の秘訣です。
このように、ITというものは、意外とヒューマンなものです。
人が考えて作ったものですから当然です。ですから、難しく構えることなく、付き合うことが大切です。コンピューターは意外と忠実で真面目な社員なのです。
次回からは、個々の企業における「システムの見直し」のポイントについて、具体的、現実的な見地から勉強してみましょう。
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