石油流通ビジネス最前線  「変わるビジネス 変わるシステム」

第九回 石油ビジネスでの「顧客管理データベース」の活用


灯油配送を起点とする「顧客管理データベース」の活用から
SSを起点とする新たな外販ビジネスモデルが生み出される予感

現在、石油ビジネスのリテール部門「ガソリンスタンド」で運用されている、各種拡販ツールや業務管理システムのほとんどは、「データベースソフトウェア」により構築されています。
マイクロソフト社のウィンドウズの登場により他のシステムとの連動性を重視したオープン化システムの普及が進み、石油ビジネスに限らず、ほとんどのビジネス分野で今迄の旧態然とした「オフコン」の時代から、サーバーによる、ネットワーク構築が中心の時代となりました。
最近の石油流通業界では、ホームエネルギービジネスの基本である灯油配送から、直売部門、潤滑油販売、さらに最近では、車検販売、からメール会員、車両ナンバー読込システムまで多岐にわたり変化に富んだ「データベースシステム」が運用されていますから、「なにをいまさらデータベース」とおっしゃる読者の方もいらっしゃるでしょう。
ほとんどの経営者の方は「データベース」自体はご存知のはずです。しかし、実際のところ、目的が異なるこれら複数のデータベースが同一企業内に存在しているとしたらシステム運用担当者はかなり複雑な作業を強いられているはずです。
今回は、石油業界の「データベースシステム」を復習しながら、より具体的に現況の石油ビジネスに応用し、更に「次なる総合エネルギービジネス」へのステップの足がかりとするための工夫とアイデアをご一緒に考えてみたいと思います。これからの石油ビジネスの展開に関して、あらためて新たなヒントが生まれてくるはずです。
面倒なIT用語が出てきますが、しばらくお付き合いください。
読者の皆様から石油ビジネスを起点とする新たなビジネスアイデアやシステム構築のご提案などございましたら、制作についても検討してみたいと考えております。
ご要望やアイデアなどございましたら、お寄せ下さい。


石油ビジネスにおける「データベースシステム」の活用

データベースシステムとは大量のデータを集めて蓄積し、必要に応じてデータを検索、集計、分析して活用できるようにしたシステムです。
図書館などに行くと、図書カードやコンピュータを利用して、読みたい本を簡単に探し出すことができます。
これは身近にあるデータベースの一例です。SSビジネスでも蓄積された流通データを経営資源として再活用し、販売促進活動などに有効に、便利に活用することができます。
「データベース」をもう少し解り易く説明すると、仮にドラム缶に10色のパチンコ玉(多様なデータ)を満タンに入れておき、「赤のみ出して」、「白と黒を出して」、「赤と白以外をだして」など色々な命令を出した場合に一瞬で出す玉の数を集計して自在に玉(データ)を吐き出す事ができるというようなイメージのシステムです。
その特性を活かして、蓄積された販売データなどを経営資源として有効に活用することができたら、ビジネス展開の指針となるはずです。
自社の顧客情報を「顧客管理データベース」として構築し、色々な角度から分析をし、無駄のない有効な販売戦略を立てる事が出来ます。
石油業界の拡販ソリューションでも「データウェアハウス」、「CRM」、など顧客管理に関する用語が飛び交っています。
たとえば、当社の灯油配送システム「雪ん子」については、単に配達した灯油の売り上げデータ処理だけでなく、むしろ顧客管理データベースの構築を基本に、そこから「灯油配送管理」の作業を合理化し、さらには有効な拡販のためのプログラムを組みこんだ販売戦略システムなのです。
最近のガソリンスタンドビジネスでは、「車検販売システム」、「車両ナンバー認識データベース」、「ポイント管理」、「洗車会員」などをはじめ、多様な業態の顧客管理データベースが同一社内で稼働しています。
よく考えると個々のシステムデータを統合したデータベースで稼働できるようになったら導入コストもランニングコストも劇的に落とすことができるはずですし、運用管理も楽になるはずです。
一部元売りでは、すでに異業種である大型家電販売店などとのポイント共有などを開始しています。今後はさらに多様な業種やサービスとの連携が可能となるはずです。
オープン系システムの普及によりデータ互換性が容易になり、其々の企業や異なる業種のデータまでも「経営資源」とし、さらに業種を複合的に超えた「顧客データ管理」までが可能となっているわけです。
はたして、今後、元売りが主導する形で進行するのか、それとも地域有力ディーラーなどによる独自戦略として展開されることになるのか、元売りカードとの絡みもあり非常に興味あるところですが、どちらにしても石油業界では、近い将来、各開発ベンダーなどの協調性により複合的なデータ活用が実現できるようになるはずです。
我々は現在真剣にシステム開発に取り組んでいます。


データ‐ウエアハウス 【data warehouse】

ビジネスソリューション(システム)の説明などで、データウェアハウス(データの倉庫)という言葉をよく耳にすると思います。
直訳すると「データの倉庫」ということですが、IT関係の辞書では「企業の経営戦略や意思決定に役立つ情報を、組織内に蓄積した大量の業務データベースから分析・抽出するシステム」とあります。
さらにもう少し専門的に表現すると「意思決定のために、目的別毎に編成され、統合化された時系列で更新処理をしないデータの集まり」となります。
難しそうに書いてありますが、要するに『データの更新や消去をせず、倉庫(データベース)の中に収納しておき、必要に応じて取り出し、経営資源として活用できるようにした、「データの倉庫」ということで、データを有効に活用する概念であると理解しておきましょう。
石油流通ビジネスの過去の売上や流通データを「データウェアハウス」に収納しておき、期間や、商品、販売数量、エリア、在庫管理、単価管理など多様な項目別「切り口」で過去の集計分析を自在に行い、現在の動向をリアルタイム把握しながら未来の計画にも有効にデータを活用することができます。


CRM(Customer Relationship Management)の活用

お客様(Customer)からの電話受注の際に、電話受注担当者がそのお客様の現在の債権管理状況などを確認の上、個別的な過去のデータをリアルタイムに参照しながらご注文や問い合わせなどに応対することができたら、お客様と親密な関係(Relationship)でのビジネスが可能ですが、実際には不可能です。
一方、お客様は常に「自分は上得意」と思い込んで電話で注文をしてきます。
地方都市などでは「○○ですが、いつものをお願いします」で通じると信じ込んでいるお得意様もいらっしゃるわけです。
お客様の名前を聞きなおして確認しただけでも気を悪くするようなケースさえあるわけです。
CRMとはお客様との関係をより親密に管理することであり、お客様との取引履歴などの関係性をデータベースに一元化して蓄積し、ニーズにきめ細かく対応することで、お客様の利便性と満足度を高めるための情報システムです。
企業がお客様の好みやニーズを正確に把握・理解し、それに応じて的確な商品・サービス提供を行うことが可能となります。
企業の競争力を高め、長期的利益の確保を実現することができるわけです。 
一般的なCRMには顧客情報の管理分析システム、CTIシステム、コールセンターシステム、営業支援システム、DMなどの販促システム、ポイントカード等のカード管理システム等が含まれます。
CRMを導入することにより、顧客抽出、ポイントシステム、購買データ分析をすることが可能となります。
優良顧客との親密な関係作りによる囲い込み戦略で、優良なお客様を囲い込み安定した収益を確保する体制づくりが可能となります。


生データを自然にそのまま経営資源として再活用する

過去のオフコンシステムでは一定期間蓄積されたデータはバッチ処理(一括更新処理)によって圧縮され、詳細データとして残せないケースもありました。
しかし、データベースのソフトウェアはハード機器のメモリ機能の許す限り過去のデータを電子化して蓄積し保有することができます。
過去、現在の動向をリアルタイムに集計分析することができ、そこから導き出されるデータをもとに「未来予測」や効果的な拡販計画立案、さらには新規顧客獲得のためのマーケティング企画などについても有効に活用することが出来るわけです。
すなわち、日常行われている作業を省力化しながら自然な形で蓄積された売上データなどを自社の経営資源として無駄なく「次のビジネス」へ再活用する事が出来るのです。
ですから、ガソリンスタンドを中心とする石油リテールビジネスで、「脱石油」が叫ばれる次の時代に何ができるか、経営者であれば色々なアイデアが湧いてくるはずです。
自分のお店の地域制や特性を生かしたビジネスを違った視点で創造することも可能になるはずですから、ガソリンスタンドというリテールビジネスにも改めて「夢」も生まれてくるというわけです。
現在の生のデータを生かして、次のビジネスにどのように繋げていくか、データの再活用が企業の行く先を決定することになります。


データベースの活用事例 CTI [computer telephony integration] と顧客管理CRMを融合
「雪ん子」によるコールセンターシステムの構築

すでにご承知のように、石油業界でも最近では規模の大小を問わず、「受注センター」、「コールセンター」、「カスタマーセンター」などの名称でお客様からの灯油などの注文を専用電話で承る窓口を設置している企業が増えてきました。
CTIとは電話回線とコンピュータのデータベースを連携させて受注業務などに利用するシステムです。
灯油配送管理システム「雪ん子」には標準仕様としてCTIが搭載されています。
一般的にNTTなどにCTIシステムの導入を単独で依頼しますとかなり高額な予算が必要となるはずですが、「雪ん子」の導入ユーザー様はターミナルアダプターを用意するだけで、CTIを装備した本格的な『コールセンター』の開設が簡単に可能です。
ですから今までは個別のSSで受注していた灯油の注文を「灯油受注センター」として一ヵ所に集約することが可能です。
SSのセルフ化などを進めるためには、それ以前に既存顧客サービスとしてコールセンターの設置による「受注一元化」が必須となっており、SS業界では急速にCTIシステムを設置する企業が増えているわけです。
そこで、「雪ん子」による灯油受注センター構築の事例について説明しておきます。
まず、お客様から灯油などの注文の電話が「受注センター」にかかりますと、瞬時にそのお客様を特定してコンピュータの画面に顧客情報をポップアップさせます。
お客様の「売掛金情報(不良客の場合には、「不良客」表示)」、過去の納入履歴、受注履歴などを表示しますから、受注担当者はコンピュータの画面を参照しながら、お落ち着いて丁寧な対応ができるというわけです。
しかも、受注はワンクリックで終了ですから大量な受注でもミスなくスムーズに受注業務が可能です。
たとえばお客様の名前を間違いなく確認しながらの受注はもちろん、「前回は○月○日に、灯油を300㍑、配達させていただきましたね」など前回の納入履歴までわかるわけですから、お客様に対する信頼感が倍増するわけです。
実は、これら「雪ん子」のCTI機能を応用して灯油以外の商品アイテムの外販配送を展開している企業が非常に増えています。
たとえば「天然水の宅配」などは灯油の閑散期である夏場の商品ですし非常に有効なビジネスとなっています。
今後、石油業界における「コールセンター設置」は、新しいビジネス展開の突破口になる可能性が拡大しています。


データベースは「宝の箱」、活かすのはあなた

石油ビジネスにおける一般的な「販売成果表(売上集計表)」は、油種別の売上数量や販売金額などの集計に留まりますが、「データベース」に蓄積された売上データはまさに「宝の箱」です。
データを更に「切り口」や「視点」を変えて縦横に集計分析すると、それまで見えなかった「販売傾向」や新たな可能性が見えてきます。
最近の灯油配送ビジネスを例にとりますと、広域ネットワーク構築により灯油以外の商品なども取り扱うことにより意外な消費者ニーズも見えてきます。
大都市部、地方都市、都市周辺部、団地や新興住宅地、農村地帯、過疎地帯、など地域商圏を切り口にしての配送商品アイテムの工夫、さらには注文方法や配送体制の工夫など非常に細かいマーケティング分析による消費動向の把握が可能ですから、より実践的で有効な拡販手法をとる事が出来るわけです。
消費者ニーズの把握だけにとどまらず、たとえばポリ缶配送などの細かい値取りも可能です。
たとえばホームタンク設置の消費者は一戸建て住宅所有の富裕層が多く、石油ボイラーや機器販売、住宅リフォーム需要などの潜在予備需要でもあり、皮肉なことに「オール電化」の見込み客でもあるわけです。
総合エネルギービジネスという観点では何も石油だけにこだわる必要はありません。
過去において薪炭から石油へのエネルギー転換の時代には、我々石油業界が新たなエネルギー転換の中心にあったわけですが、今後は石油から他のホームエネルギーに変わるはずです。
したがって、ビジネスも変わります。
私が全国を巡回していると、「灯油の時代は終わって、「燃転」だから、もう灯油システムなんて不要になる。」と自らの石油ビジネスを否定する経営者もいらっしゃいます。
しかし私から見れば、エネルギー転換の今こそがビジネスチャンスだと思うわけです。
データベースシステムはそんな時代の変化を先取りできる情報が詰まった「宝の箱」であり、これこそが「変わるビジネス、変わるシステム」の真骨頂だといえます。


素人でも可能な、「アクセス」などを駆使したデータベース構築

「データベース」といってもさほど難しいものではありません。
「Microsoft Office」に搭載されている「アクセス」などでしたら、パソコンが得意な方が少し勉強すれば簡単な「データベース」構築が可能です。
問題は情報として活用できるデータをどのような切り口で集め、どのように生かしていくかという事だと思います。


石油ビジネスの次の展望を開くために、あらためてデータの再活用を

リテール販売レベルでは改めて自社独自の「顧客管理データベース」構築の必要性を感じている企業が増えています。
現在、ガソリンスタンド周辺システムとして、SS店頭に於ける「油外収益向上」のための拡販ツールがいくつも提案されていますがそれらのほとんどが「データベースソフト」で構成されており、それらのシステムのデータにも多くの経営資源が蓄積されているはずなのですが、ソフトウェアとしてはそれぞれが単独したデータベースとして構成されています。
できればそれらのデータを統合的に取りまとめて複合的な集計分析をしたいところです。
それぞれの企業の経営ポジションで必要なデータも異なるはずです。
リテール段階のビジネスは、「大転換期」に入っているわけで、現在は暴風雨の真っ只中といったところです。
ほとんどの石油関連ビジネス企業が「次の時代のビジネス」を模索しています。
機動的なデータ分析で「次の時代」への見通しを立てるための、意思決定速度を上げるには改めて「データの再活用」の必要性が問われています。
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