石油流通ビジネス最前線  「変わるビジネス 変わるシステム」

第十一回 「灯油配送ビジネス最前線」(下)


システムを駆使した、実戦版、売り勝つための「灯油販売戦略」

前回は主として、灯油配送に関するビジネス環境と「雪ん子」の機能概要を中心に説明を行いましたが、今回は灯油拡販に関するポイント、そしてデータベースシステムを駆使した販売戦略手法と配送業務コストダウンの実現、そして現在のマーケットから派生している消費者ニーズの変化などについても考えながら、データベースを駆使した、結果の出せる「売り勝つための灯油販売戦略」の具体的手法についてご説明します。


売り勝つために、前提となるポイント
「配送」と「店頭」の区別、消費者の理解が進む「コスト意識」

同じ商品でありながら、受注業務から配達業務を伴う「配送灯油」と、セルフSSやホームセンターなどの店頭で販売される「店頭現金灯油」では、ビジネスオペレーション(業態)が全く異なります。
という事は、取り扱う灯油という商品は同じものであっても、商売そのものが全く別物であると認識すべきです。
消費者の側に立って購入方法を考えたらもっと大きな格差があります。
自宅にホームタンクを設置して定期配送で灯油を購入しているお客様もいらっしゃれば、セルフSSやホームセンターの店頭へ自分の車でガソリンを使って、18㍑のポリ缶を下げて買いに行く消費者もいるわけです。
「配送灯油」と「店頭灯油」の単価の価格差は全国的にみて7円から12円程度まであります。
仮に18㍑の灯油を購入するとしたら単価が10円格差で180円、12円の単価格差でも216円、ということです。
冷静に考えれば、これではタバコひとつも買う事が出来ない金額差です。いかに消費者が価格指向だとはいえなぜコストと時間を考えないのだろう不思議でした。
最近では、消費者もコスト意識に目覚めたということで「配送灯油」に再び大きな脚光があたっています。
ホームセンターによる灯油店頭販売発祥の地である北関東エリアなどではホームセンター系の店頭販売は急速に勢いを失っています。
「灯油受注センター」機能を設置した配送業者による灯油システム導入が進み、「定期配送サービス」などの普及により灯油配送に対する消費者の要求が変化し「配送灯油」がみなおされています。それに伴い配送コストも充分に認知されてきました。
注文方法、再分化される配達条件、定期配送に対する要求度、配送スタッフに対する信頼性、などをはじめ、今後はより高度な配送サービスが求められる事になるはずです。
同時に北東北などでは数年前の灯油専門業者の倒産による「前売りチケット」などの影響もあり、販売業者に対する信頼度なども問われています。


まずは、自社の「地域性」、「身の丈に合った」視点を

灯油という商品は販売する側に立っても、実は色々と視点が異なります。
この雑誌の中心的な読者である「ガソリンスタンド(SS)運営業者」はガスを併売しているケースも多いわけですが、最近ではガソリンスタンドを経営していない「ガス・薪炭系販売業者」、「灯油配送専門業者」などでの灯油システム導入が急速に増えています。
私自身日夜、全国各地の多様な業態の灯油販売業者に呼ばれてシステム構築やご相談に応じているわけですが、数年前と比較して灯油ビジネスそのものが、全国各地で独立した業態として成立している現実に驚かされます。
きっと、読者の周辺にもそのような灯油販売業者が増えてきたと感じられる方も多いはずです。
ところでSS店頭におけるガソリン100㌔の販売収益と配送灯油100㌔の粗利益を想定して考えてみてください。どちらが有利でしょう。
考えるまでもなく配送灯油の収益面での優位性がご理解いただけるはずです。
当面の課題としてはどのような戦略で目標売上を達成することができるかということでしょう。
最近、システムが安くなり導入のハードルもだいぶ低くなりました。
スタートは最小限の規模でまずは業務オペレーションを確立し、段階的にバージョンとネットワーク規模などを拡張させるケースが増えています。


販売業者の自覚と自信が具体的な収益効果を生む

灯油配送にかかるコストを販売価格に転嫁できる事が明確化してきた現在では、「店頭価格」と「配送価格」の価格体系は全く別物となっており、配送灯油の価格体系はマンションやアパートなどの階ごとに単価が変わるなどの細分化までも常識となっています。
即日配送や油切れの緊急対応配送時などの配送コスト転嫁もできるコスト環境となっています。
すなわち、灯油の「配送サービス」そのものが商品化できる時代が到来したわけです。
そのため配送灯油の「値取り環境」はかなり整備されてきました。
この事に気付かずに周辺の乱売価格情報に惑わされているSS業者がかなり多いようです。
石油ビジネスに限らず「デリバリーサービス」の充実による有料化は異業種でも常識化しており、消費者に対する価格転嫁の環境は整備されてきました。
問題はSS業者自身の配送サービスに対する自信と自覚だと思います。
万全のサービス体制を構築することで自信を持った値取りができるわけです。
ですから、それぞれの企業が行う配送サービスの質が問われています。
それによる顧客度満足度の向上、さらにはサービス体制に対する業者自身の自信と自覚こそが価格転嫁のポイントとなっているわけです。
厳しく言えば、ここまで来て値取りができないのは、顧客満足度を満たす配送サービスができない業者の「泣き言」であると認識すべきです。


成功のポイントとなる、「マーケティング手法」

灯油ビジネスで、最大の経営効果(収益)を上げるには、其々の企業が立地するマーケットの地域性や配送現場に合わせた運用方法、そして灯油という商品の特性に合わせた企業の独自性を前提にした工夫により収益性がさらに大きく変化します。
「灯油ビジネス」は、単に他社の成功事例を外形的に真似るだけで必ず同じような結果が出せるというものではありません。
「勝ち組」といわれる企業をよく観察してみると必ずポイントとなるマーケティング手法の独自のノウハウが企業内に内包されています。
フランチャイズビジネスなどの画一的なビジネス手法でも、全て同じ成功の結果が出ないという現実をみればご理解いただけるはずです。
地域制や企業特性などを考慮した独自性が成功のポイントであり必須条件ともなっています。
同じビジネスを同じ手法で行っていても格差が出るのはご承知の通りです。
ポイントとなるのは正確でスピーディーなデータ管理に基づく「マーケティング販売戦略」です。
データを検索し細分化して集計し、多角的に分析することで今迄見えなかったマーケットの特性が必ず見えてきます。


「売れる灯油販売」、ビジネスフォーム確立のヒント

SS業者による灯油拡販戦略で一番多いのは、「新規客獲得」手法についての質問です。
従来、店頭の看板価格商法に依存しているSS業者の場合、外販灯油顧客獲得の手法については意外と不得意なようです。
そこで、どのようにしたら灯油の新規外販顧客を囲い込むことができるのか、幾つかの手法を提案してみましょう。
最近の灯油販売は「現金客」や「クレジット」、「自動引き落とし」による購入比率が高まっています。
灯油だけの現金客ですと従来はコードを持たないケースも多かったわけですが、定期配送などを行う場合には「現金客」でもコードを持つ必要があります。
ですから、現在では「灯油現金客コード」を持つことは当たり前となっています。
次に拡販のための宣伝手法についての質問も多いわけです。
当社の東北や北陸などのユーザー様は地方テレビ局などで「灯油配達」のテレビコマーシャルまで流しています。
沖縄などでもテレビ宣伝で実績をあげている有名な当社ユーザー様もいらっしゃいます。
はっきり言いまして、「収益性の高い灯油ビジネス」ですからテレビ宣伝も可能なのです。
一般的なスタート時には、新聞折り込み広告なども有効です。
ポイントとしては、価格よりも、他社との配送サービスの格差を強調するということです。
ですから、最近は配送サービスの内容を他社と差別化するため、PBマークなどでの灯油ビジネス展開が全国各地で盛んです。
地域名称を冠した「○○灯油センター」などの灯油配送センターも全国各地に生まれています。
ロゴマークや車両カラーなどまで独自性を持たせるケースが増えてきました。
これは、元売りカラーなどですと、近隣に同一マークのローリーが多いため、独自性が薄れるからだと思われます。
フリーダイヤルを設置し、「CTIシステム」を装備した灯油配送センターの設置がまずは最初のスタートとなっています。
特に、11月からの灯油シーズンインに際しては、前年データを確認しながら今年の拡販戦略に着手しましょう。


灯油新規客獲得にはCTIを活用する「受注センター」設置

まず、新規顧客獲得の第一歩としては、一般的には受注専用のフリーダイヤル番号を明記した「灯油センター開設」のチラシ広告などが最も有効です。
そして、過去に何度か説明しましたが、CTI(computer telephony integration)という受注センター専用システムを装備することで素晴らしい効果を発揮します。
CTIシステムは電話と顧客管理データベース、そして電子電話番号帳を一体結合したコールセンター専用システムです。
新規顧客獲得のためには最適なシステムだと言えます。
まず電話番号帳に登録のある新規客から注文の電話が入ると、新規客からの注文もワンクリックだけでマスター登録を完了させることができます。
新規客の地図表示や既存客の場合には過去の取引履歴や受注履歴までリアルタイムな情報をPC画面で確認しながらの受注作業ですからお客様との親密度がさらに向上するわけです。
さらに、既存の不良債権客などからの注文に対しては着信時に「不良債権者」に関する注意情報を表示して、受注を拒否することも可能です。


具体的な拡販戦略の展開事例

冬場の灯油から夏場の「天然水」などの油外配送商品まで、最近では灯油配送業務を起点とする新たなビジネスフォームの模索が盛んです。
これにより、ガソリンスタンドビジネスに明るい展望も見えてきます。
既に、新たな試みがスタートしているわけですが、ここでは灯油の拡販戦略に絞り込み、具体的な拡販戦略の事例をいくつかご紹介します。

①.「スリーピングリスト」作成で「過去の実績の取りこぼしをなくす」
例年、灯油をご購入頂いているお客様でも、気付かずにいるといつの間にか注文が途絶えているケースなどもあります。
「スリーピングリスト」は今シーズンに入って、「○月○日」以降ご注文の無いお客様をデータベースからエリア別や各種条件検索で瞬時に検索抽出し、ダイレクトメール用のタックシール印刷、さらに、メール会員などに対してはメールを配信することができる機能です。

②.「灯油ポイント」による価格戦略
最近、色々な業種でポイントによる顧客囲い込みが盛んです。
灯油もシーズンを通しての使用数量をポイント化することで「囲い込み」戦略を優位に展開できます。
特に灯油の場合の価格戦略はシーズン終了後に消費数量に応じてのポイント還元で価格の後出しが可能となるため、固定化に優位な展開が図れます。
「雪ん子」ではハンディPOSからプリントアウトされる「納品書・領収書」に対してリアルタイムなポイントを印刷表示しますから改めての「ポイントカード」作製も不要です。
さらに、オプションによりポイント統合のためのデータ書き出しコンバートも用意されています。

③.「灯油お客様紹介値引き」
既存のお客様に新規顧客をご紹介いただき、新規客が使用した数量に応じて既存のお客様に対して還元するという拡販システムです。
これらの複雑なデータをコンピュータープログラムにより「請求書」まで完全にコントロールすることが可能です。


配送サービス自体を充実させ、顧客満足度向上させ、

さらにサービス内容を価格体系化することで、値取りが可能となる
「洗車」サービスの歴史について考えてみてください。
現在、「洗車」は油外収益の中核となっています。
しかし、私が現役の頃のSS業界では「洗車有料化」はガソリンスタンドビジネスにおける大きなテーマとなっていました。
石油組合などで啓蒙活動を行っていた時代もあったわけです。
今では考えられないことですね。
ところで、灯油の配達料についても最近まであいまいな部分が多かったわけですが、ようやく配送サービス自体のコストが認知されているのはご承知の通りです。
洗車有料化の時代もそうでしたが、激しい販売サービス競争に明け暮れていた石油業界ですから最初に「洗車料金」を請求するのは大変でした。
しかし、今では洗車サービスも「質」により段階的な価格設定も可能な時代となったわけです。
すでに灯油配送業務も完全に配送サービスとしての「質」が問われる段階に入っています。
さらに、冬場に偏っていた灯油配送を起点として、新たな通年の「宅配ビジネス」の可能性が見えています。


そして、灯油配送を起点とする「次の段階」のビジネスが見えてくる。

灯油ビジネスの最大の弱点は季節格差が大きいという事でした。
そのため、システム稼働率を考えるともったいないという意見がありましたが、最近では灯油配送ビジネスを起点とする新たな宅配ビジネスモデルの模索が全国各地で進んでいます。
携帯電話のWEBを活用しての受発注などは、今後石油業界に新たなビジネスモデルが生まれてくる予感がしています。
たとえば、「お預かり洗車」の注文メールなどにも非常に便利に転用できるわけです。
低迷といわれて久しい、ガソリンスタンドビジネスなのですが、我々は灯油配送管理データから派生する新たなビジネスモデルの開発を積極的に進めています。是非ご期待下さい。
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