石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第1回  SS経営者に「いま改めて問われる課題」

1. 「がんばれ! 日本のガソリンスタンド」

私は日夜、経営規模を問わず全国の販売業者の皆様と面談しながら石油業界におけるシステム的な課題と向かい合っておりますが、最近、全国各地どこへいってもガソリンスタンド(SS)経営者や経営幹部の皆様から石油ビジネスに関する課題や疑問だけでなく、システムとはまるで無関係な悩みなどまでも相談されるケースが増えてきました。一体どうなっているのやら・・・、私はご承知のとおりシステム屋なのですが、まるで経営コンサルタントか人生相談のようになってしまう時もあるわけです。私自身、過去30有余年にわたりガソリンスタンドの現場最前線における実務経験を重ねてきました。みずから油槽所を建設し「中間流通(業転)ビジネス」を展開し、地域では名うての業転屋としてそれなりに石油ビジネスの「裏」も見てきたつもりです。すでにそんな私の過去についてはご承知の方も多いはずですが、現在ではその失敗のキャリアが経営資源ともなっているわけです。ですから健全な経営者諸氏のご相談に応じるほどの力はとてもないとも思うのですが、あれ以来10年が経過し私は徒手空拳の中から再生して現在の仕事をしております。そんなわけで経営者の皆様から見ると現在私がこのように頑張って生きているという事自体に興味をもたれる方が増えてきたのだと感じています。なんといっても自分の人生における最大の汚点です。最初は正直言って傷口に塩を塗りこまれるような気分の時もありました。しかし、「岡目八目」という諺もあります。人の碁をわきから見ていると、打っている人より八目も先まで手が読めるという意味です。確かに過去は「現場最前線で油にまみれて生きてきた人生」でしたが、現在、自分自身が改めて石油ビジネスを客観的に観察する立場になったからこそ見えてきたものがたくさんあるわけです。現在では過去の失敗のキャリアを前提として「この発想は須賀さんでなくては、」などと私のソリューションを評価していただいたときなどは自惚れとは思いつつ本当にありがたい事であると感謝しています。同時に今後は、改めて石油業界の皆様と課題を共有し、自分の拙い石油業界におけるビジネスキャリアもお役に立てたらと考えています。今となっては私の失敗経験も「次の時代」に向けてのビジネス再生の「宝物」となってきたようです。今年も読者であるガソリンスタンド経営の皆様にエールを送りつつ、一生懸命考え、ともに悩みながらも頑張りましょう。


2. 自らも石油業界人としての自戒を込めて

「日本のガソリンスタンド」というビジネスフォーム(業態)の歴史を改めて考える
日本のモータリゼーションの黎明期から成長期に歩調を合わせながら我が国の「ガソリンスタンド(SS)」ビジネスも成長してきました。創生期から似たようなデザインの設備を作り、壁の色調を統一し元売り別に系列のサインポールを掲げながら全国で画一的なサービスを展開してきた最も古いフランチャイズビジネスが「ガソリンスタンドビジネス」だとよく言われます。確かにあの頃の「サインポール」は現在よりも価値があったように思います。「距離規制」などもあって勝手に新設できない時代でした。どこの系列の特約店、サブ店でもそれぞれブランドに対するプライドも持っていたように思います。系列のサインポールを掲げ、頻繁に開催される「キャンペーン」と呼ばれる販促活動に一生懸命忠実に取り組んだものです。当時はSS運営業者にとっても商品情報が少ない時代でした。オーナードライバーと呼ばれた消費者も当然知識が乏しく車に関する新商品は何でも簡単に売れた時代でした。ですから元売りから提案される季節商品や新商品を「キャンペーン」といわれる定期的な販売イベントに乗るだけでそれなりの「油外収益」が確保できたわけです。ですから、当時は自社で「何を売るか」という事をあまり工夫する必要もなかったわけです。元売りやタイヤメーカー、バッテリーメーカーなどから提案された情報や商品について、用意されたパンフレットやカタログを来店するお得意様を「待ち受けて」配布しながらアプローチして販売するという手法が定着してきたわけです。来店したお客様の車の「ボンネット」を必ず開けること。「ボンネットの中は宝の山」なんて指導されながら汗を流したものです。現在でも行われている「フィルドサービスコンテスト」などは当時の名残ですね。私も元売の「トレセン」で何度も教育されました。当時は、店主やマネージャーにとって元売りから頂く「キャンペーン」の表彰状や盾などにまるで「勲章」のような価値観を感じた時代でもありました。今でも訪問した会社などにかつての「キャンペーン」の煤けたトロフィーや盾、表彰状などが晴れがましく飾ってありますと、私には、なぜかかつての石油ビジネスの栄華を物語るうら寂しい飾り物として目に映ってしまいます。当時は系列から提案されるSS運営のビジネスフォームを忠実に実行するだけでなんとかなったわけですから、ある意味「系列」というものにそれなりの統率が取れていた時代であったともいえます。その点において各元売がガソリンスタンド創生期から成長期において販売業界に果たした役割は非常に大きいものがあったと認識評価するべきだと考えています。


3. 努力も不要な夢のような時代から淘汰期へ

ある意味、元売間の新設競争による過剰保護下での経営指導は、多くのガソリンスタンド経営者にとって「商人」として一番大切な「独自の経営工夫」と「創造性」を発揮する機会を失わせることとなりました。しかし、この事については元売を非難することは不条理なことです。なぜなら「創世期」から「成長期」のガソリンスタンドは数も少なく販売競争も激しくありませんでした。むしろモータリゼーションの発展に追いつくべく新設競争にさらされていたわけですから現在とは全く逆の時代でもあったわけです。「作れば必ず売れた時代」時代でしたから元売各社は特約店や地域に優良立地を保有する有力者などに対して競い合い、盛んに「ガソリンスタンド新設」を推進したという経緯があります。すなわち「新設ラッシュ」の時代です。この時代にガソリンスタンドを運営した経験のある方はご存じのはずです。本当に良い時代でしたね。最近のコンビニエンスストア業界の動向をみてガソリンスタンド業界と同様の「飽和期後業界の歪み」を感じていらっしゃる方も多いはずです。我々から見たら新しいビジネスフォームだと思っていたコンビニ業界でさえ、すでに過剰淘汰の波に晒されています。今では信じられませんがガソリンスタンド業界は「自由化」以前は永く保護されてきたわけです。距離規制もあり、自由に出店できませんでしたし独禁法などにもほとんど関係なく「石油組合の協定価格」という言葉がまかり通っていた時代もあったのです。系列から決まった商品を「浮気をせずに」仕入れただ販売するだけで一応の利益が確保できる、今では夢のような時代でもあったのです。そして現在石油業界は激しい淘汰の波にさらされております。最近の「事業仕分け」によって給油所の老朽化した地下タンク・配管からの油漏えいを防止するための「土壌汚染環境保全対策事業」が事業仕訳の対象となり業者に支出する補助金までもが「廃止」と判定される時代なのです。改めてSSその存在意義までも問われているように感じているのは私だけではないはずです。年老いたベテラン社長とよくお茶を飲んでいますと「須賀さん、よく考えるとこの商売、よい時代が短かったね・」という目線の先には「夢のような良き時代」を生きてきて時代を懐かしむ思いが込められているようです。


4. 「淘汰の先に何がある」・・・次の時代のエネルギービジネスに向けて

振り返れば「化石エネルギー」は早くも約半世紀あまりですでにピークを越えつつあり、「次世代エネルギー」に向けての転換期を迎えようとしています。この間の歴史を地球的規模で考えると「石油エネルギーの時代」はほんの一瞬であったと言えるのかもしれません。ガソリンスタンドという業態が「創生期」、「成長期」、「成熟期」を経て、現在はやくも「淘汰期」に入っているという事に異論を唱える方はもはやいないはずです。確かに最近の石油流通ビジネスには制度的疲労も目立つように感じられますがしかし、すぐに石油の時代が終焉し全てのガソリンスタンドが廃業に至るはずもありません。今後の世界的なエコブームと環境対策問題などによりそれなりの期間をかけながら石油に対する依存度は徐々に低下していくことになるはずです。従って石油ビジネスに携わる企業にとっては「次の時代」に向けて消費量の減少を見据えながらエネルギービジネスとしての転換のタイミングをうまく捉えていくことが今後は経営における最大のポイントになるはずです。その流れに乗り遅れた場合に廃業する企業や淘汰される企業が増えてくるのは当然のことです。一方ではすでに次の時代に向けて「新たなエネルギービジネス」であるソーラーやエコフィールなどの技術開発や具体的な普及活動が並行して進められていることもご承知の通りです。あれほどの隆盛を誇った日本の自動車業界ですら一昨年以来、すでに輸出不況とハイブリッド化により大きな過渡期を迎えているのです。今後、ガソリンなど「自動車用燃料」を中心とする既存のガソリンスタンドビジネスはハイブリッド化の流れのなかで、かなりの減販を想定しなくてはなりません。しかし、総合的なエネルギービジネスとしての視点で考えると、ホームエネルギーを中心として新たに大きな需要が発生する可能性もあります。それは、例えばエネルギー転換によるエコ機器などの需要やリフォームビジネスなどであると思われます。とにかくエネルギービジネスの「次の時代」を予測しながら時代を先取りすることが経営のポイントとなるはずです。かつて、薪炭系エネルギーの時代から石油の時代への過渡期があったわけですがその時代に石油業界の先人はすでにエネルギービジネスの転換期を経験してうまく乗り越えている企業も多いわけですから、時代は再び繰り返すということになるのでしょう。この変化の時代を「チャンス」としてとらえるか、または「ピンチ」として諦めるのか、それはそれぞれの経営者自身の意識と能力にかかっています。事ここに至って「業界の歪み」や系列に対する不満を述べてみても、絶対にガソリンスタンドビジネスの課題は解決できません。当然のことながら、実はすでにこの事について、自らの認識をお持ちの業界経営者の方が増えているのは当然のことだと思います。


5. エネルギービジネスとして、石油業界にいま改めて問われる

ビジネス創造力と可能性
石油ビジネスを総合エネルギービジネスとして考えると、「ガソリンスタンド」はガソリンや軽油など自動車用燃料を販売する限定された一つの部門であるとも言えます。そして先に申し上げたように自動車用燃料に関しては減販傾向となるはずです。しかし、ホームエネルギービジネスという切り口で見ると「灯油」や「LPG」という商品アイテムもあるわけです。この分野は今後エコやエネルギー転換により形を変えた機器需要なども発生してくるはずです。この場合、ホームタンクなどを設置している戸建て住宅の所有ユーザーが機器販売の見込み客となるはずですから、当然現在の灯油固定客のデータが貴重となります。さらに専門的知識を要する工業用潤滑油の分野などもあります。この分野も各元売りによる拠点代理店設置などが進んでおり今後は、産業用燃料部門と潤滑油ビジネスについてはより専門化してくるはずです。それらの変化によって、ガソリンスタンドというビジネスがどのように形を変えながら存続していくかということについては、次号から予測していくこととして、とにかく、閉鎖や淘汰による設備の減少に伴い、SSのフィールドに限定した従来の「待ちのビジネス」からの脱却を迫られているという現実に異論はないはずです。その視点からは改めてエネルギービジネスとして大きなビジネスチャンスと可能性が見えているように感じています。必ず「次の時代のエネルギービジネス」のヒントがあるように思います。  


6. 「セルフ化」により大きな変化が発生している

SS業界は「セルフ化」の普及により自ら進めてきたSSフィールドでのサービスを放棄するという新たなビジネスフォームを創り出しました。一方では再び店頭における「油外収益」の必要性が叫ばれているわけですから、そのことに矛盾を感ずる経営者の方も多いようです。店頭に人は置く必要はない、しかし、店頭での油外収益は増やしたいという偏った要望について、色々な提案がなされていますが一体どのようにして実現するというのでしょう。小手先の販売ツールで解決がつくはずもありません。いま、業界自らが創り出したセルフというビジネスフォーム自体が業界みずからの閉鎖や淘汰を進め実は石油ビジネスの業態見直しまでも迫られているということについて認識をお持ちでしょうか、セルフ化と経営の疲弊により確実にSS部門の灯油配送体制などが極端に弱体化しており全国各地に「灯油配送空洞地域」が多発しています。この事は消費者ニーズを無視した石油業界の独り善がりだとすでに気付いているリテール業者の方が増えてきました。皮肉なことに昨年度は安売りセルフSSの新設を進めた北東北の灯油宅配専門業者の倒産により、一般業者の売り上げが急増したという珍現象が発生しました。我々の灯油配送システム「雪ん子」を運用している企業のほとんどはフリーダイヤルによる「灯油受注センター」を設置しておりSSが閉鎖した配送過疎地帯へのパンフレットやDM配布により「受注センター」の電話番号を告知するだけで、ほとんどの企業が確実に40%以上の新規顧客獲得により大幅な拡販成果を実現しています。昨年度は「灯油で息をついた」というリテール販売業者の皆様の声も増えており少しばかりホッとしています。


7. たとえば、灯油配送システム「雪ん子」を駆使した、SSフィールドから脱却したビジネスモデルの成功事例について

SSフィールド内における油外収益と灯油配送などの「ドアツードア」の外販ビジネスでは、ビジネスオペレーションが全く異なるという認識については、すでに多くの企業で定着してきました。配送サービスの質を向上させることで灯油配送のコスト転嫁も可能な環境となりました。当然収益性も高まっており、最近では元売り系販社や大手フリート系業者によるネットワーク化が急速に進行しています。さらに「セルフ化」により余ったマネージャークラスのベテランスタッフを「勝手口」からのドアツードアビジネスに再活用する手法が車検見込み客の獲得や「天然水の宅配ビジネス」などに有効な事もすでに確認されています。車検見込み管理はSS店頭における車検勧誘セールスなどと異なり事前に「見積もり資料」などを作成し、灯油配送などの折に充分な時間的余裕を持ったセールス活動を行うという手法です。「雪ん子」はデータベースソフトですから、車検見込みデータ管理にも応用するという現実的な手法も定着しつつあります。「天然水宅配ビジネス」は夏場の需要が多く、システム導入に際しての課題であった「雪ん子」の通年有効活用が可能となりました。最近は「雪ん子」の使用大手ユーザーにより「新たな宅配ビジネスモデル」開発も全国各地で試行されており、ガソリンスタンドを起点とする宅配システムとしての可能性がさらに拡大しています。当社としては今後、ユーザー様のご要望に応じて、より多様な商品に対応できる「配送システム」としてさらなるバージョンアップを実行する予定です。


8. 具体的提言

私は、かつて北米や欧州の石油ビジネスの現場を何度も視察した事があります。都市部に立地している大資本の最新のセルフ設備を視察したときには自分の企業は地方の田舎に立地しておりましたので、はたして自分のビジネスにどのようにフィードバックできるかという事について考えこんでしまう時期もありました。しかし、たった一人で北米を移動中にある地方都市ですれ違った古めかしいローリーに目がとまり、あとを追いかけて給油作業まで見学させていただきました。そこで「セルフSS」の普及と同時進行で郊外や地方都市ではデリバリー(宅配)を伴う「ホームヒーティング」という分野が消費者ニーズを背景に急速に実績を伸ばしているということを知りました。その後、自分のビジネスに活用すべく灯油配送システムの開発に着手し「雪ん子」を完成させました。よく考えるとかつて自分が見てきた「あの時」の事実と流れが現在の日本国内で再び起きています。「松茸は千人の股をくぐる」ということわざがあります。儲かる商売がないものか、廃業しようかと悩む前にもう一度だけ、自身の足元の地域性や企業の特性を発揮することができる新たな道を探るべく経営者としての「創造性」を発揮する機会を作りましょう。
本年度からは、足元に発生している石油ビジネスに関する話題や課題も含めながら執筆を行う予定です。編集者からは、さらに「私らしい個性」を打ち出すようにとのご要望もございますので「アクが強い」内容となるかもしれません。浅学非才の自分です。思っている事をストレートに書くことで、もし失礼の段がございましたら、石油ビジネスに対する情熱をおくみとりの上、お許しいただきたいと思います。また、ご質問などもお寄せください。


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