石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第3回 「エコカーの普及」と「SSビジネス」の未来を改めて考え行動する


 とみに最近、全国各地の石油流通ビジネス企業の経営者の方と話していると、元売からリテール業界までその立場は多様ですが、それぞれの業態や立場によって経営に関する視点や課題も異なるようですが、どうも「ガソリンスタンド」という業態に関しては一致して、あまり芳しい見通しをお持ちでない方が多いのは寂しいことです。
確かに、淘汰の風が吹きまくるSS業界ですから、「儲かりませんね・・」が挨拶のように聞こえてしまうような厳しい昨今の状況です。
 世界的な環境問題とエコブームの中で「ガソリンスタンド」という業態そのものが大きな岐路に立たされているわけです。
 そこで、改めて「ガソリンスタンド」という業態について視点を変えながら考えて見てみますと、確かに課題も大きいわけですが一方では確かな可能性や「次の時代」に向けてのヒントも見えてくるような気がしています。


1.エコカーの普及は、「ガソリンスタンド」ビジネスにどんな影響を与えるのか?

 私は最近、外資系の某コンサルティング企業や投資集団などから、日本のガソリンスタンドビジネスについて、特にEV(電気自動車)などエコカーの普及が「ガソリンスタンド」という業態に対してどのような影響を及ぼすのか、そして石油関連機器メーカーなどの動向に関しても見解を求められる機会がありました。プリウスなどHVのエコカーの普及がこれほど急速に進んでいる我が国ですからガソリンを中心とする化石燃料の販売減少が予測されるのは当然だと思いますし「ガソリンスタンド」という業態について今後の推移と変化に興味をもたれるのも当然のことです。
 私は自動車に関する評論家ではありませんから新しいエコ技術情報に関しては詳しい事はよくわかりませんが、それでも昔はJAF公認のラリーチームを主宰していた事もあります。そんなわけで、自動車の専門情報に詳しい友人も多いわけでモータースポーツ関係のワークスチームに所属する仲間の意見も聞きながらの見解という事になりました。モータースポーツの担当ですからエコカーとは全く逆の世界なのですが、新たな技術開発についても取り組んでいる専門スタッフです。ご承知の通りエコカーは、EV(電気)、ハイブリッド(HV・電気と石油)、水素燃料などが開発の中心となっているようですが、某社ではガソリンエンジンのみを使用して30㌔/㍑以上の燃費走行が可能というような優秀なエコ技術も出てきたようです。まず公的機関や電力会社などを中心に各社の新しいエコカー導入が進んでいるようですが、現状では普及実用前段のテスト領域であろうという事ですし普及にもかなりの期間を要するという見解です。しかし技術としては確実に具現化されており、ご承知のとおりトヨタのプリウスなどのHV(ハイブリッド車)は既にこれだけ売れまくっているわけですからガソリンに対する依存率は確実に低くなるはずです。
 しばらくは各自動車メーカー再編の動きも急ですから技術開発競争は過去におけるビデオのVHSとベータの規格競争と似たような混乱した状況が続くであろうと予想されているようです。今後各自動車メーカー間におけるエコカー開発競争はさらに激化しさらに新たな劇的な技術が生まれる可能性が高いとも予想されます。特に、スズキとVWの資本提携は今後販売台数が増えてくる「国民車」に強い企業同士の提携であり、当面は販売戦略に関する事項よりもエコカーに関する共同研究開発が中心となるようですから技術開発と部品共通化などによる製造コスト低下に関する面でも世界的に動向が注目されているようです。国内では自動車メーカー四社による次世代エコカー用ソフトウェア開発の共同開発なども開始されており、今後はエコカーの低価格化の実現により普及速度が急速に推進されるとみるべきです。
 過去にはモータリゼーションの発展とともに成長してきた石油業界ですが、今後はエコエネルギーで転換期を迎える自動車産業の変化とともに、「ガソリンスタンド」業界も大きな変革期を迎えることとなるはずです。


2.エコカー普及と「ガソリンスタンドビジネス」に関する近未来予測

 「ガソリンスタンド」という業態は自動車に付随したエネルギーサプライ(供給)を中心とするビジネスフォームとして成長してきました。従って自動車の動力エネルギーが石油(ガソリン)から他のエネルギーに転換すれば、それなりのエネルギー供給を行えばよいといいたいところですが、実際にはそんな単純なものでない事は申し上げるまでもありません。
 多分ここから先の事については近未来に対する予測という事になりますから読者の皆様とかつて読んだ手塚治の未来漫画を読んでいるような感覚で予測し論議することにもなるのかもしれませんが、ここではもう少し現実的に石油業界、特に「ガソリンスタンド」ビジネスの足下の課題として考えてみることにしましょう。


3.「ガソリン」依存率低下の速度とSS淘汰の進行

 エコカー普及によりガソリン需要の減少が今後どの程度の速度で進むのかという予測についてはいろいろな見解と試算があります。私も公的機関のデータや自動車メーカーの技術情報などのガソリン消費量減少に関する予測データをいくつか見渡してみましたが予測データが多くしかも見解についてはかなり幅が大きいように感じます。
 最近のデータの概略としては2008年を基準として5年後の2013年にはほぼ[75%~85%]程度という見解が多く、一昨年と比較するとこれから3年後には15%から25%程度ダウンするという予測データが多いようです。この数度をどうとらえるかは結果を見なくては解らないといったところなのでしょうが、実際のところ我が国では民主党政権の成立により今後国際公約として二酸化炭素25%削減を実現するための「チャレンジ25」と呼ばれる政策プロジェクトがスタートし色々な環境対策の工夫もなされるわけですから、今後の推移についてはかなり流動的な部分が多いともいえます。
 データや情報を見ているだけでも大変なことだと思いますが、しかし、これは、あくまでのマクロ的な情報データであり、当面化石燃料に対する依存率は依然として高いわけですから、これらのデータが実際に「ガソリンスタンド」どのような影響を及ぼすことになるのか、激しい淘汰の嵐にさらされているSS数の減少を前提とした場合、私は1SS当たりのガソリン売上の減少率はマクロデータよりも少し低くなるであろうと想定します。


4.マクロの視点とは異なる、「エリア戦略」による「勝ち残り組」の経営ポイント

 全国的にガソリン消費数量が減少することを前提としても、「ガソリンスタンド」の絶対数もかなりの速度で減少しています。最近では、1SS当たりの売上動向について、「当面それほど悲観的になる必要はない。逆に自社商圏内のSS単位では売上が伸びているところも増えてきた。」という地域有力ディラーの強気の発言さえ聞こえてきます。確かに各地のマーケットを「エリア」として見渡すと閉鎖や淘汰とは裏腹に「勝ち組地域有力ディラー」や「元売系販社」による寡占化攻勢が進んでおり、この事実は各元売りによる地域販売戦略とも連動しているように見えます。元売の施策として経営力、販売力のある地域有力特約店が積極展開しているエリアは有力特約店に任せる。
 一方では経営力、販売力に欠ける特約店に依存しているため地域シェアが低いエリアなどでは統合化を進める事によって販売力強化と経営合理化をはかる。各元売は最近販社や系列強化による「エリア戦略」を強力に推進しているともいえます。この方針は販売戦略強化面だけでなく、むしろ相対的な「地域経営管理コスト」の削減という大きな経営効果も生み出しています。マーケットを更に細分化し各市町村エリアなどにおける地域密着型優良販売店のエリアビジネスにおいても同様の事が言えます。たとえ経営規模が小さくともエリアにおける灯油配送やガスビジネスなどで地域エリアマーケットに密着し、シェア率も高く存在感のある「ガソリンスタンド」ビジネスを展開している安定した石油流通企業も非常に多い現実を見逃すわけにはいきません。
 それらの「地域勝ち組企業」では既に「次の段階」に向けてシステム構築による社内業務管理の合理化などにも着手しておりさらなる「格差拡大」の傾向も見えています。


5.「灯油配送」から可能性が見えてくる、ガソリンスタンドを起点とする「エリアビジネス展開」

 エリア戦略の重要性が一番顕著な事例としては「灯油配送ビジネス」に関する展開があげられます。
 フリーダイヤルとCTIシステムを装備した「お客様コールセンター」や「灯油受注センター」、「配送センター」等の開設による業務集約化が大きな収益効果をあげている事については既にご承知の通りです。最近ではさらに「灯油以外」の商品アイテムや配送サービスに関する模索も活発化しており「ガソリンスタンド」を起点とする新たなビジネスフォームにさらに大きな注目が集まっています。今後は全国各地で、「地域一番店」や「元売系販社」、「広域ディラー」などによる「エリア戦略」のための「顧客管理データベース」構築が進むことで徹底した「優良顧客囲い込み」が進行することは確実です。「顧客管理データベース」といっても店頭における油外拡販のための車両を軸としたソリューションとはかなり視点が異なります。
 具体的な収益を生み出すための手法として「灯油配送ビジネス」を具体的な起点と切り口にして、本当の意味での「地域顧客管理データベース」がポイントとなるわけです。あとはSS店頭以外の運用についていかに工夫し「エリア戦略」として活用するか、これが今後の「雪ん子」の課題となっています。
 現在、ガソリンスタンドの閉鎖とセルフ化による影響で灯油を中心とする石油製品の小口配送体制が弱体化しているエリアが全国各地に多発しており、政府として政策的対応に迫られることになるかもしれません。地域エリアの「顧客管理データベース」構築により消費者ニーズをくみ上げるとともに、地域特性や企業としてのオリジナリティーを発揮しながら、ガソリンスタンドのフィールドを飛び出し、採算性の見込める付随サービスを開発することが「勝ち組企業」における最大の課題ともなっています。私も共に考え模索してまいります。


6.「ガソリンスタンド」のフィールドから、外販ビジネスへ

 視点を変え、「ガソリンスタンド」というフィールドを飛び出しての「外販ビジネス」や「受注・配送体制強化」によりあらたなビジネスフォームの模索が盛んになってきたわけですが、
 以前にも何度か書きましたが、ガソリンスタンドという商売は基本的に設備をつくり「客を待つ」という「待ち」のビジネス業態です。特にガソリンの商品特性として自動車そのものが来店しないことには店頭での油外収益もなにも確保できないわけですから、まずは「価格」でお客様を集めてから洗車やその他の油外で稼ぐという手法が今迄の一般的な手法であったわけですが、その商法自体が無益な「価格競争」を誘発してきたという現実もあります。
 さらにセルフ化によりビジネス手法は大きく変化しています。セルフに慣れた消費者の中には販売業者の想定とは逆に「高くてもセルフ」などという全く反対な購買志向の方も増えているようです。不景気ですから千円だけの少量プリセット給油や忙しい時などのSSスタッフによるセールスアプローチさえ煩わしいと感ずるケースもあるからです。普及時には女性や高齢者による利用が懸念された「セルフ」なのですが、現実はどうでしょう、セルフもこれだけ普及してきますと消費者も慣れてきました。
 近距離の切符を買う際には全て「自販機」ですし、銀行へ行って必要なお金だけを下ろすとしたらわざわざ窓口まで行かずにATMを使う時代ですから、ガソリンを購入する場合にもセルフが支持される理由もわかるような気がします。


7.書を捨てて、まちに出よう!!  改めて、今なすべきことは?

 全国を見渡せば一概に「ガソリンスタンド」と言ってはみても地域性や立地条件もありビジネスフォームは多彩です。仮に地価が高くても低くても、そして同じ自社物件で運営しているとしても同一設備であれば同じコストが掛かるはずです、投資効果という面では大都市部で優良立地のガソリン販売価格や洗車料金は地方都市とはかなり価格体系が異なりますから比較できるはずもありません。
 都内の真ん中の高価な土地で昔から「ガソリンスタンド」を経営し、日本一高いガソリンを売っていると自負する経営者の方を知っていますが、実におおらかなものです。SSよりも収益性が高い土地運用方法があればいつでもそちらに運用を移行することも可能なのです。
 しかし、一般的な地方都市での「ガソリンスタンド」ビジネスで利益を生み出すとしたら実際には相当な努力が必要です。中小SSでは経営者自らが店頭に立っての販売促進努力が必要なケースも多く、昔のように人件費を払っていたら採算に合わない状況だと嘆く経営者が多いのだと思います。
 全国を歩けば、石油流通ビジネスで「勝ち残る」ためにどのような情報や知識や創造性が必要か、そして今後に向けてどのようなアクションが必要かも見えてきます。「ガソリンスタンド」経営者の皆様におかれましても先入観をすべて捨てて考えれば、それぞれの地域や企業でやるべきことが見えてくるはずです。苦しいこともありますが、共に考え模索しながら努力を重ねてまいりましょう。

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