石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第4回 「人材育成と適正配置」が最大の課題

    石油ビジネス最前線での「社内管理体制」再構築のポイント


 システム構築を通じて、多くの石油企業と接していると色々な事が見えてきます。石油流通ビジネスのIT化によって経営情報のリアルタイムな共有化とシステムに関する「戦略的活用」の推進が急激に進んでおり、ソリューションとは「課題」という意味だとまさに感じています。特に中小企業にとって「人材」は本当に大切だという事を改めて痛感する事が多い昨今です。この点については経営者の方にお読みいただきたい事項が多いのですが、何かお気づきになる点やお気に障る事がありましたらご容赦を。


1.「笑えない話」

 クライアント(お客様)企業の課題や要望を当方がいかに汲み取り理解し具現化できるかという我々自身の課題と能力も同時に問われるわけですが、ときにはそれ以前のヒアリングの段階で問題が発生する事もあります。多くの場合、経営者や管理者などのIT環境に関する認識不足などによる行き違いのケースも多いわけですが、ときには笑えないような問題も発生します。
よく言われることですが「コンピューター」は魔法の箱ではありません。まず前提として、どんな事が出来て何が出来ないかをよく 理解したうえで、次に何をどうしたいのかシステム構築の目的や手法についても整理することが大切だと感じています。その点について一歩踏み込んで書いてみましょう。業務改善のヒントが必ず見つかるはずです。
 今回は、石油ビジネスのIT環境の変化と「人材」に焦点を絞り、システム構築時の課題と業務改善時における幾つかの留意事項、そして実際の現場で発生しやすい問題について事例をもとに述べてみます。


2.システム担当者の苦悩

 最近、某会社のシステム担当者から突然「実は私は退社することになりました。退社する前に貴社のシステムをもう一度だけ当社内でプレゼンテーションしていただきたいのですが・・、」というご連絡を頂きました。あれは二年前の事でした。オファーを頂きシステムプレゼンテーションを実行した企業は中堅特約店でSS運営のほかにカーディラーなど幾つかの業種を展開しておりそれらの業務について基幹業務を統合するERP構築を前提としたシステム導入をご検討中で彼はそのプロジェクトリーダーという事でした。
 かなり規模の大きな構想で、石油以外の業態比率も高いため当社としては開発リスクを伴う為受注を断念した経緯がありました。その後の開発構築段階における経緯についての詳細は解りませんでしたが、どうも石油流通部門のシステムに関する概念的な部分で経営幹部とシステム担当者の間で行き違いがあったようです。
 ご承知の通り石油流通システムは汎用システムとは異なりかなり特化した特殊な部分が多いため、大手システム会社などでは内容について理解できず、開発に時間と大きな予算を掛けてもなかなか思うに任せず、結局彼はその責任を取っての退社となってしまったようです。事情は事情として石油システムに関して問題となっている部分について改めて説明をさせていただきました。担当者にとっては仮に自分の責任ではなくとも知識や理解の問題でこのような「行き違い」のトラブルに直面する事も多いわけです。彼は、以前見た我々のシステムならその機能を満たしているという事で、退社にあたっての「置き土産」として再度のプレゼンテーションを要望したというわけです。彼が退社するという事は非常に残念なことなのですが、開発から構築に関しては企業だけでなく、システム担当者も大きなリスクを抱えているという事になるわけです。「なぜもっと早く・・」という残念な気持ちが頭をよぎります。某社では優秀な若手の人材を失った事になるわけですから、企業にとっても、担当者にとっても不幸なことであり、損失も大きいと言わざるをえません。
 「たった一人でも能力のあるシステム担当者がいれば・・」と思われている経営者の方が多いと思いますが、これは経営者自身の課題でもあるわけです。SS以外の「直売部門」や「管理部門」など石油流通ビジネスの今後はまさに「システム競争」の時代ともいえるわけですから、まさにその課題を克服する時期が到来しているともいえます。


3. 「新仕切り体系」による業務煩雑化

 事例に挙げたシステム構築の課題部分を分析してみますと、多くの場合、石油システムといえば、請求書を作成するための勘定系データ処理を中心とする「SS店頭POS」システムを指す事が多いわけですが、最近の特約店業務は「新仕切り体系」によりさらにリアルタイムでしかもスピーディーなデータ処理が要求されておりシステム運用の現場業務はさらに煩雑化している事に根本的な問題があるようです。
 現在は元売から提示される細かく変動する仕入条件を「仕入単価」として設定し原価管理しながら、同時に個別条件に基づき「販売単価設定」に正確に反映させなくてはならないという煩雑な作業を要求されています。さらに最近では「仕切り単価」だけでなく、同時に複数の仕入先を前提としての全社「油種別・数量枠管理」、さらには、販売店や大口需要家向けのリアルタイムな「与信限度額管理」などへの対応も迫られているのが現状です。
 それだけではありません。「軽油税納税管理」、や運送会社の「配送運賃管理」、流通区分も「届け・倉取り・施設渡し」などに分かれます。管理コスト削減で本社の人員が削減される一方、同時に実行される業務省力化のためのシステム構築となれば担当者の能力や才能に対する依存度は高まるばかりでストレスも溜まります。当然のことながら、設備投資ですから経営者からは確かな「結果」を求められます。
 経営者に知識や理解力があれば可能、不可能の判別もつきますが、現実的には予算などのハードルもありますから慎重に進めるべき問題だと思います。とにかく、石油流通ビジネスに関する管理業務は特殊で複雑ですから、人材育成に時間が掛る事も企業にとっては大きな負担となっています。それでも、ここでもITに精通する有能な人材が必要である事は申すまでもありません。


4.まさに企業にとっては「人材が命」、資質と能力を問われるシステム担当者

 最近も笑えない事例が発生しました。地方の某中堅特約店において「基幹システム構築」に関するプレゼンテーションの依頼が舞い込みました。事前に課題が明記されシステム構築に関する仕様や要望も一応作成されており、開発ベンダーを複数社集めての事前説明会まで行われました。当社としても提案書を作成し対応することとなったわけですが、仕様書の最後に「以下の仕様について「パッケージ」により予算を安く構築してほしい」とのコメントがつけられておりました。当該企業はガソリンスタンドの運営、石油直売部門、ガス部門、さらに機器販売などもあり業態が多岐にわたっています。
 一般的にシステム業界では「パッケージ」とは「既に完成された出来合いの」という意味にとらえることが多いわけですが、
どうも、その企業のフローチャートを作成したシステム担当者と経営者との間で「パッケージ」という言葉に関する見解が全く異なっているようにも聞こえます。
 経営者の方が開発業者の方の前で御挨拶したうえでおっしゃる「パッケージ」とは全てのシステム構築に関する予算を「パッケージで・安く」というようにも聞こえてくるわけです。そんなケースは難しいですね、読者の皆さんはどう受け取られますか?
私も同席していましたが、そんなケースではシステム担当者が席上「社長それは違います!」とはなかなか指摘しにくいような雰囲気です。我々としては担当者の顔を眺めながら経営者に質問していいものやら、いけないものやら・・・・、それぞれの業務にあった「専用パッケージシステム」を個別に採用して連動統合させるという意味なのか、それとも完全な業務統合として最初から組み上げるのか、これでは立ち往生してしまいます。
 おまけに、大企業か官庁での打合せのごとく一方的に説明時間が制限されているわけですから、当方としては充分な打合せや質問時間もありません。そのまま、プレゼンしてもどうにもなりませんが一応時間内にプレゼンを終了しました。しかし、とても見積書提出まで行けない状況です。地方の企業での事例でしたが、今考えるとシステム構築にあたり、担当者が関係書籍などのマニュアルだけを参考にしての開発段階における「早とちり」のような気がしています。そんな時、このビジネスは実に難しいものだと感じます。


5. 事前の打ち合わせとシステムの「実績」がポイント

 社内基幹システムの構築などにあたっては、絶対にITに関する知識と石油業界に精通した外部の専門スタッフによる助言が大切だとおもわれます。特にわからない事は妥協せずに時間を掛けて理解できるまで確認する事がポイントです。かくいう私でも、一人で全てを理解しているわけではありません。
 石油流通業務に特化した知識だけはなんとかなりますが、最新のIT環境や技術的分野は担当の専任スタッフに依存するわけです。とにかく開発経験豊富な企業が持つ業務に特化した開発事例は、実際に具現化され稼働しているわけですから安心です。たとえ大手システム会社であっても実際の開発ベンダーは下請けの中小システム会社というケースも多いわけです。まずは、すでに現場で実際に稼働しているシステムを自社の意向と照らし合わせる事が前提です。
 運用実績の高いシステムには必ず多くの優秀企業のアイデアやノウハウが詰め込まれており、構築にあたっての構想を上回る機能を搭載しているケースも多いわけですから変則的なカスタマイズで余計な経費を掛ける必要は全くありません。しかも構築期間が大幅に短縮できます。内容の確認や、状況が許せばテスト運用してみる事もいいでしょう。仕様を確認したうえで導入時のカスタマイズは最少の変更に留めるべきだと思います。理由としては、システム導入時のイニシャルコストだけでなく、サポートなどのランニングコストを考慮した場合、保守経費が掛らないという大きなメリットもあります。
 当社のシステムの場合でも、ユーザー様のご意見やご要望を取りまとめて定期的なバージョンアップを行っており、導入後のランニングコスト軽減と余計なカスタマイズの費用負担が掛らないよう努力しています。


6.システム担当者による「業務囲い込み」が思わぬ事に・・

 数年前、某地方の老舗特約店に呼ばれました。私を呼んだのは某大手元売りの経営指導スタッフで、彼とは以前別の特約店企業の灯油拡販戦略とシステム構築を行った事のある出向社員でしたが、私の顔を見るなり彼の口から出たのは、「いつか、あのガラス張りの部屋をぶち壊してやる!!」という過激な発言でした。後方で元売計算センターと接続しているのにもかかわらず、なんと昔風のガラス張りのオフコンによる自社電算室が存在しているという変わった企業だったのです。驚きました。計算センターの担当者に聞いても「訳がわからない」と言います。何とシステム担当者は鍵を掛けていて何をしているのか解らない。SSにあるパソコンなどもハード部分を別の箱に入れていて操作はできても他の人間が触れる事ができないようになっていました。何故そんなことをしているのか全く理解できません。社長に聞いても解らない。担当者は「システムのセキュリティが・・云々」という事でしたが、出向社員曰く「この会社は経営者も含めてダメですね・・・・」。それから暫くしてその会社は倒産しました。今では隣接の同一マークの企業が経営を引き継いでいます。経営者は若くて、脂の乗り切った世代で好人物でしたが「売り家と、唐様に書く三代目」ということわざもあります。今でもなぜあの社長はあのようなシステム担当者に対して指摘し、より強硬に業務改善の指示ができなかったのか残念でたまりません。
 最近の二世、三世経営者は、元売や有力特約店などで修行して家業を継承しているケースも多いわけですが、本当に軟弱な人物が多くて「尻」を蹴っとばしたくなるような意気地無しが多いような気がしています。パソコンのアクセス履歴はインターネットの掲示板やエロサイトばかり。担当の税理士に怒られるような高価な高級車を買い込んでも仕事は嫌い。「人材」とは、社員ばかりでなく経営者自身やその後継者まで問われているようです。もちろん、こんなケースだけではありませんが、しかし、淘汰されるには淘汰される理由がある事を認識する必要があると感じている昨今なのです。


7.ポイントは常に「業務の標準化」を考慮しておくこと

 ご承知の通りセルフ化により、SS現場に従事する人員はだいぶ減少しているように見えますが、一方、地方の一部老舗特約店などの本社管理部門では現在でも相変わらずスタッフが多すぎると思われる企業が見受けられます。ベテラン社員が多くてまるで田舎の役場のような雰囲気の企業さえあるわけですが、スタッフが一体どんな作業をしているのか業務の内容が気になります。我々がそんな企業へ伺ってプレゼンテーションなどを行う際に「合理化」や「業務省力化」を声高に提案していると厳しい視線にさらされる事もあります。
 ベテラン社員などに眼鏡の上から睨まれてから「アッ!」と気付くわけですが、難しいものです。ときには、システム担当者自身が「自分の仕事を奪われる。」との危機感を持って業務改善に抵抗する場合さえもあるわけです。実は、この辺が経営者として一番大切なポイントであり頭の痛い問題でもあろうと思われます。ポイントとしては日頃からいつでも誰でも業務が出来るよう「業務の標準化」を前提に改善しておく事が大切です。個人による「業務の囲い込み」が企業にとって思わぬトラブルや問題を引き起こす事も多いわけです。これは、大手でも、中小でも同じこと。「合理化」といえば企業の経営課題と社員の職域の利害が相反するわけですから当然のことなのです。
 簡単な事のようですが苦しい時代を共に過ごした永年勤続者もいることでしょうし現実的にはこの辺の理由で合理化が一番難しいとおっしゃる経営者の方が多いわけです。どこの企業にも改善や改革に対する「抵抗勢力」が存在するものです。全く難しい問題です。業務改善によるコストダウンを目指す場合、意外と大変なのは実はこのような人的課題なのであり、どんな業種の企業でも抱えている共通の悩みであるともいえます。
 しかし、こんな時代ですから社内を見渡して企業にとって収益向上のための業務改善にネガティブで保守的な社員や管理スタッフがいるとしたら、経営者の使命として速やかに遠慮なく措置を取るべきだと感じます。これからは、たった一人でもいいからITに精通した若手で有能なネットワーク管理者(アドミニストレーター【administrator】)が欲しいとその存在の必要性を感じていらっしゃる経営者の方が多いはずです。
 ようやく、業務に特化した「基幹業務統合系システム(ERP)構築」によるリエンジニアリング(企業再構築)の必要性が叫ばれている石油業界です。業務改善にあたりまずは足元の「人材の課題」について、感じている事を書いてみました。

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