石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第5回 いまこそ「勝ち組」経営者に学ぼう!
       勝ち組経営者のバイブル「成功はゴミ箱の中に」


1.「決め付け」はよくない

 確かに石油業界は儲からない時代に入りました。しかし、世の中にはこの不景気の中でも高収益を上げ、確実に成長を続けている「勝ち組」といわれるさまざまな業種の企業があります。
 「勝ち組」といわれる企業を観察してみると、どうも業種とか、景気動向とか、経営者の年齢などに関係なく経営成果を上げており、しかもそれらの企業には共通したポイントがあるように感じられます。
 現在では羨望を浴びるような「勝ち組大企業」にも必ず苦難の創業期があったわけです。
 そして、競業他社とは異なる経営のエキスやノウハウを必ず持っています。
 「利益が出る業種なのだから、当たり前・・」、「あの人は特別運が良かっただけなのだ・・」、「なにをしても儲かった時代なのだ・・」、などと簡単に諦め片付けてしまう前に、勝ち組といわれる経営者の、ビジネスに賭けるその精神とその「ビジネスの中身」についてもう一度改めて考え直してみることも意味があるように思います。


2.マクドナルドの経営戦略

 マクドナルドに関する最近の報道をみて驚きました。あれだけの高収益を出しているマクドナルドが日本各地でかなりの数の店舗を閉鎖するという報道です。一瞬、驚かれた方も多いはずです。しかし、中身を調べてみると「非採算店」を閉鎖して企業としてのさらなる財務体質強化を図る目的だという事。一方ではすでに都内で新しい店舗内装のアンテナショップをオープンしているという事です。なるほど、利益が出ているからこそできる前向きな店舗閉鎖であり、「次」なる成長に向けてのあらたなコンセプトの店舗展開による経営強化策といえそうです。
 最近発売した、「テキサスバーガー」、「ニューヨークバーガー」、「ハワイアンバーガー」、「カリフォルニアバーガー」などもすごい売れ行きです。私も食べてみましたが値段は従来のものより高いようですが美味かった。あれは、アメリカでは「グルメバーガー」という高級ハンバーガーの分野ですね。
 昨年発売開始した「プレミアム・ローストコーヒー」も好評のようです。正直言いまして、私はこれまでマクドナルドのハンバーガーをあまり食べたことがなかったのです。
 最近、暇にまかせて本棚を整理していて、以前読んだマクドナルドに関する「一冊の本」を手にして改めて読み返してみました。
 マクドナルド創業者「レイ・クロック自伝」。『成功はゴミ箱の中に』、という本です。
 副題として「世界一、億万長者を生んだ男」というタイトルがついており、日本でも多くの「勝ち組経営者」のバイブルとして知られています。
 かつて感動して一気に読破した事を覚えています。限られたページですから、感じたことの全てを書くことはとても不可能なのですが、現在の日本国内における石油ビジネスマーケットで生き抜くために、読者の皆様にとってなにかの「ヒント」となれば幸いですし、また既にお読みになった方にも、参考意見としてお読みいただければと思います。


3.「レイ・クロック」と、「カーネルサンダース」に学ぶビジネスチャンスのとらえ方

 「マクドナルド」というハンバーガーショップは、ロサンゼルス東部のサンバーナーディノという町でマクドナルド兄弟が開業したのが始まりでした。実はレイ・クロックという人物はマクドナルドのビジネスフォームを確立して世界的チェーンにした人物です。
 1954年といいますから東京オリンピックが開催された10年前、彼は当時ミルクセーキ用のミキサーを販売するため全米各地を旅していたわけですが、当時52歳だったレイ・クロックが特に着目し感心してビジネスの可能性を感じたのは、マクドナルド兄弟が経営するハンバーガーショップの清潔な店内、シンプルなメニュー構成、標準化された調理手順、セルフサービスによる業務効率化に着目したときであり、その標準化されたビジネスフォーム自体をチェーン展開したいという望みを強く持った時点から「マクドナルド」の快進撃がスタートするわけです。ここで見過ごすことが出来ないのは、当時、彼はドリンク類の紙コップとミルクセーキ用ミキサーのセールスマンであり決して美味いハンバーガーを作ることのできるコックではなくフードサービスのプロでもなかった事です。
 ところで、あの「ケンタッキーフライドチキン」の創業者カーネルサンダースは不遇な少年期を過ごし15歳から社会に出て働き始め、路面電車の車掌を皮切りに、色々な職業を転々としてから、タイヤ売り、その後「ガソリンスタンド」経営をしてから、あの「ケンタッキーフライドチキン」のビジネスフォームを立ち上げたことも広く知られています。


4.レイ・クロックのビジネスの真髄

 レイ・クロックは、「Be daring(勇気を持って)」、Be first(誰よりも先に)、Be different(人と違った事をする)」が彼のビジネス成功の真髄であると述べています。誰よりも先に人と違ったことをするわけですから決して「人の真似」をするわけではありません。しかし、彼はライバル店の「ゴミ箱」を漁ってまで競合他店の中身を知ろうと努力しているわけです。ビジネス全体の構想をとらえる前に細部を十分に検討しながら全体像の構築に取り掛かるという考え方で、柔軟性をもったビジネスフォームを構築できたわけです。
 当初、マクドナルドの商品アイテムはたった二種類だけでハンバーガーとチーズバーガーだけ、あとはフライドポテト、ソフトドリンクとコーヒーだけという内容でした。世界中どこでもいつでも同じ品質で安いハンバーガーをお客様に提供するためにはどうしたらいいのか、彼はそのことに必死で取り組んだわけです。現在のSSにおける販売商品アイテムも自動車用燃料が中心で比較的少ないわけですからどこか似ています。そして、どこでもいつでも同じ品質のサービスを提供する必要があるという点でも同様の課題を抱えていると言えるでしょう。


5.ガソリンスタンドのビジネスにどう生かすか 「知りたいことはゴミ箱の中に」の意味

 レイ・クロックはその著書のなかで「競争相手の全てを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。知りたいものは全部転がっている。私が深夜二時に競争相手のゴミ箱をあさって、調べたことは一度や二度ではない。」と述べています。
 孫子の兵法にも「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。競合企業の成功事例のポイントを探り自分の企業にフィードバックすることは経営者にとって非常に大切なことだとは思いますが、しかし、ライバル企業がその儲けの「秘訣」を簡単に教えてくれるはずもありません。
 ハンバーガーショップはフードサービスですから「ゴミ箱」を漁ればライバル企業の売上動向や食材内容などでビジネス成功に関するヒントが得られることもあるはずです。経営者であれば誰でも成功している企業のエキスと内容は知りたいはずです。ところでガソリンスタンドビジネスで成功のポイントを探るとしたらどんな手段があるのでしょう。いろいろとかんがえてみました。
最近は全国各地のガソリンスタンド経営者の方と話していると「何か他に儲かるビジネスはないものでしょうか?」という質問を受けるケースが増えています。
 そんなときに私が思い出すのは「成功はゴミ箱の中に・」というレイ・クロックの言葉です。競争の激しいハンバーガーショップという業種で勝ち抜き、しかも確実な経営実績を上げるためには大変な努力と外見では見えない工夫とポイントがあるはずです。それはどこか、ガソリンスタンドビジネスの経営環境と似ているところがあるような気がします。


6.ガソリンスタンドとハンバーガーショップを比較すると

 ガソリンなどの量販型ビジネスでは、どうしても低価格戦略がポイントになります。しかし、フードサービスでは価格だけではなく当然のことながら「味」も問われます
 「より良いうまいハンバーガーを安く売る」ためには綿密な「レシピ」が必要となるはずですが、石油ビジネスではSS店頭で販売される燃料について基本的に品質格差が無いわけですから「他社より良い商品を」というわけにはなかなかいきません。車の燃料ですから微妙な「味覚」ではなくて走行フィーリングと言ったところでしょうが、それも一般的な消費者にとって商品格差を感ずることは少ないはずです。従って、どうしても「安く売る」ためだけの価格競争になりがちです。ここが、SSビジネスの一番難しいところであり競合他店との差別化という観点からも大きな課題であるといえるでしょう。
 しかも最近では業界みずからセルフという業態を作り出し、付随する「サービスの質」の格差まで自ら放棄しているわけですから、ビジネスにおける工夫の余地はさらに狭まったともいえるわけです。消費者の目が「価格」ばかりに行くような状況を業界自らが作り上げてしまったことでさらに難しい経営環境を業界自らが作り出してしまったと言わざるをえませんし、業界としてのジレンマもここに集約されているようにも思えるわけです。そんな石油ビジネスなのですがよく考えると石油製品には大きな強みもあります。
 フードビジネスは嗜好品ですからハンバーガー以外にもファストフードの種類は非常に多いわけで、カレーでもピザでも競合するフードサービスを上げたらきりがありませんが、一方、石油製品は当面、安定した需要に支えられた「必需品」であるという絶対的な強みもあるわけです。もう少し視点を変えながら工夫することで新しい「何か」が生まれてくるような気がします。


7. 石油ビジネスにおける「ゴミ箱」とはなにか

 多くのガソリンスタンド経営者は①.「仕入の工夫」、②.「拡販のための手法」、③.「油外収益の向上」の3点が収益向上のポイントだと思い込んでいる方も多いわけですから、石油ビジネスとマクドナルドを比較して何の意味があるのかと考える読者の方がいらっしゃるかもしれません。
 しかし、「成功はゴミ箱の中に」という本は勝ち組経営者の代表であるアパレル業界のファストリテーリング社(ユニクロ)の柳井正氏やIT業界の代表企業ともいえるソフトバンクの孫正義氏の経営バイブルともなっています。
フードサービスとは全く異なるそれらの業種であっても「ある部分」で共通する成功への道筋となる基本的な考え方や経営手法があるように思えるのですが、いかがでしょう。
 どんなに競争が激しい業種であっても必ず「勝ち組」としてのセオリーがあるわけですから、競争に勝ち残るためにはその勝ち組のセオリーを石油ビジネスにいかにフィードバックして生かし切れるかという事が石油ビジネス成功のポイントとなると確信しています。
 それぞれの業種に特化した経営のポイントがあるわけですから、石油流通ビジネスにおける経営のポイントをいち早く「ゴミ箱の中から探し出す事」が成功への道筋につながるものと考えます。


8.石油ビジネスにおける現状の課題

 ここで、冷静に現在のガソリンスタンドビジネスの大まかな課題を考えてみましょう。
①.昔の商人は「利は元にあり」と言いました、現在の石油ビジネスでも利益を出すために「仕切り価格」が重要なファクターであることは当然です。しかし、ここでよく考えてみましょう「新仕切り体系」という仕入ルールが動き出している現在の石油業界では「仕入」に関して大枠の流れは既に決まっており、自社だけ利益を出せるような劇的に安い仕入を行う事は現実的に不可能な状況だといえます。
②.地方や特定のエリアにおいて淘汰や閉鎖による競合店の減少により販売数量が増えている傾向もあるわけですが、現在、そして今後予想される「減販の時代」にどのようにしたら、競合店に「売り勝ち」自社だけ販売数量を増やす事が出来るでしょうか、今までと違う視点での「拡販手法」を模索する必要があります。
③.デフレスパイラルによる不況下で消費者の財布の紐が閉まっています。SS店頭でどんな商品をどのように売ったら「油外収益」を増やす事が出来るのでしょう。改めて消費者ニーズを洗い出す必要がありそうです。
以上のような現在の経営環境を考えると、まさに「八方塞がり」の石油業界のようにも見えますが、先進的な石油流通企業では既に 「次の時代」に向けて、具体的に全社的な業務改善に着手しています。


9.「勝ち組のセオリー」
  企業としての総合的な社内業務オペレーション改善による徹底的な経営管理コストダウンからスタート。

 セルフ化により店頭オペレーションが単純化され人員削減はかなり進んでいるようにも見えるSS業界ですが、本社などにおける業務管理経費については遅れている企業が多いのが現実です。一方、3チャン経営の小規模業者はそれなりにスリムな経営体質のところも多いわけですが原単位が少なく経費削減の幅は限られています。運営するSS数と絶対的な販売数量が前提になることは当然ですが、特約店レベルにおける業務管理経費については、システムを駆使しての業務オペレーションの工夫により劇的なコストダウンが可能です。
 業務見直しによる人件費などの削減と「業務改善」による相対的なコストダウン効果が「仕切り価格」よりも大きな格差を生んでいます。今後の減販の時代を想定した場合、自らの経営分岐点を下げることはSSの店頭の拡販努力よりも即効性があり確実な収益効果を生み出す事が可能なのです。社内的な業務オペレーション改善ですから競合他社などは外見からは理解できません。この事はSS経営の蔭に隠れた「ゴミ箱」を「宝の箱」に変えることであるともいえます。
 しかも、ここには意外なポイントがあります。「減販の時代」とは言いながら、SSの淘汰や廃業がこれだけ進むと意外な販売増加を見込むこともできる時代となっています。
 石油ビジネスにおける現在の「勝ち組」はマーケットの変化にも敏感でより有利な立地条件でのビジネスを展開しており、今後は極端に少ないスタッフでより大きな販売量を消化するための業務オペレーションを確立しつつあります。ですから生き残るためには勝ち組企業の「ゴミ箱」をあさって見ることがポイントとなるはずです。当然「仕切り価格」は重要なポイントですが、今となっては誰でも容易に知りうる「仕切り単価情報」だけが命運を分けるという単純な考え方よりも企業の盛衰を分ける「経営分岐点を下げる」工夫が必要だと思います。その事で価格競争力も強化され、初めて他店と同価格であれば必ず勝ちぬくことも可能な企業となるはずです。


10.「Be daring(勇気を持って)」、Be first(誰よりも先に)、Be different(人と違った事をする)」

 企業としての相対的な「経営分岐点」を下げる手法はそれぞれの企業の立場によって、色々な工夫があるはずです。「現在の日本の石油業界は「タライ」の中で多くのアメンボが競い合っているようで、しかも、そのタライは急流に流され、やがて大きな瀑布(滝)に向かっている」と話す「勝ち組経営者」の声がより説得力を持って聞こえてきます。

 いま、石油ビジネスで頑張っている経営者にとっては
「Be daring(勇気を持って)」、Be first(誰よりも先に)、Be different(人と違った事をする)」という、
レイクロックの言葉が改めて心に響いてくるはずです。

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