石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第6回 多発する「SS過疎地帯」と灯油対策

「安定供給に貢献する」というお題目が揺らいでいます。
厳しい経営環境の現実と公共性の狭間で苦悩するガソリンスタンドビジネス
全国各地で多発する「SS過疎地帯」は地域生活にも深刻な影響を及ぼしつつあるようです。
無くなって初めてわかるガソリンスタンドの存在価値。
国民生活に対する政治的な対応も含め、いま、「ガソリンスタンド」の存在価値が改めて問われる時代が到来したように感じます。
今回は、「灯油配送ビジネス」の最前線の現場状況と共に、今後のガソリンスタンドの新たなビジネスモデルへの展開の可能性を検証してみましょう。


1.全国各地に急増する過疎地域
 最近幼なじみのお寺の住職が私のところへ訪ねてきて、「村のガソリンスタンドが3軒も閉鎖して、灯油の配達が出来なくて村民が困っている、ガソリンも街へ行ったときに入れてくるしかない。なんとかならないものだろうか・・・」と嘆いていました。聞けば、村のJAのSSまで閉鎖することになったという事です。ホームセンターどころかコンビニさえもないような過疎地域です。群馬県の現在では人口が2000人台という限界集落ともいうべき過疎の村。しかも、全国有数の高齢化が進む地域です。それでも和30年頃には人口が一万人規模ありました。その頃の世帯数は1911軒、それが現在では1200軒という事ですから、人口の減少率と比較すると世帯数は比例して減少していないことに気付きます。これは、村に残り生活しているお年寄りが多いという事を示しています。このような地域でも「灯油」は生活必需品であり、まさにライフラインであるともいえます。ところが隣の町でもガソリンスタンドの閉鎖が進み、JASSとあと一軒だけになりそうだという事です。既に過疎地域は全国各地に存在しており、灯油配送を中心とする石油製品の安定供給体制が揺らいでいる現実が全国各地で報じられています。エネルギービジネスにとって最大のポイントである「安定供給」についての課題が噴出しています。


2.SS本来の使命「安定供給」の危機

 私の会社にも、一年に何度かは必ず消費者の方から「灯油の巡回販売が来なくなったのですが・・・」という電話や問合せメールを頂戴します。多分インターネットの検索で引っかかるのでしょう。遠方からの問い合わせも多く、どうも当社を「灯油巡回販売」の会社と間違えて電話をしてくるようです。
 そんな時には、丁重に説明してお断りするわけですが、なかには「灯油を配達してくれるお店を紹介してください」という要望もあります。最近思うのですが、石油業界人としての「枠の中」で考えるビジネスとしての「ガソリンスタンド」と消費者から求められている「ガソリンスタンド」というビジネスのカタチに「溝」が出来ておりさらにギャップが拡がっているようにも感じます。これまで石油業界では「安定供給」という言葉がお題目のように唱えられてきたわけですが、業界自らが生み出した厳しい価格競争により消費者に対する本来の使命が見失われつつあるように見えるのは嘆かわしい事です。地方などでは「ガソリンスタンド」はもう少し消費者の身近にあったような気がします。しかしながら厳しい現実の経営状態を知れば、その事を責めるわけにもいきません。当事者であった私自身が一番よくわかります。
 都市部におけるガソリンスタンドと地域のガソリンスタンドでは、存在意義がだいぶ異なるようにも感じています。都市部では店舗が過剰で過激な価格競争を演じている一方、地方の過疎地では閉鎖で国民生活に影響がでている現状をみるとき、改めてガソリンスタンドというビジネスの存在意義を考えてしまいます。この閉塞感、なんとかならないものでしょうか。


3.都市部にも「灯油配送過疎地帯」が発生している

 実は、中堅以上の都市においてもSSの淘汰やセルフ化により、「灯油配送過疎地帯」と似た「空洞化」が多発している現実があります。「灯油」というエネルギー商品がそこにあっても必要な時に消費するお客様のもとに届かなければ本来の「安定供給」の意味はありません。「ウチは、セルフだから、ポリ缶を持って買いに来ればいいじゃないか・」と主張する販売業者の方もいます。冬季だけ巡回する販売業者のなかには地方などからの出稼ぎや成果給のアルバイトなども多いため、売れない地区は突然巡回しなくなるようなケースも多いようです。同じ巡回販売でも「焼き芋屋」とエネルギー供給の「灯油配送」ではビジネスの公共性が異なります。本来は販売業者の一方的なご都合主義でなく消費者ニーズが前提となるべきなのですが、季節商品でもあり人件費などによる「採算性」の壁に阻まれているのが現状です。ですから、消費者は危険物を車に積載して燃料代を掛けてホームセンターやセルフSSまでポリ缶をぶら下げて「買いに行く」という行動を強いられることになるわけです。よく考えてみると、仮に15円/㍑の価格差があったとしても、270円/18㍑というタバコひとつにもならない価格差なのです。自分の車の燃料を消費して、時間を掛け、寒空の下に並んでまで危険物を車のトランクに積んで灯油を買いに行くコストを考えると、消費者の「やむを得ない状況」が見えてきます。


4.「協業化」と「業務集約化」で採算性を確保

 販売業者の側にも「採算性」の壁や、販売業務オペレーションの工夫によるコストダウンの課題がありますが、一社だけの売上ボリュームだけでは採算に合わない「灯油配送」も地域の複数社による「協業化」などによりビジネスとしての可能性は充分に拡がります。さらに受注体制から配送業務までシステムを駆使して合理化を図る事で、ガソリンスタンドを起点とする新たな可能性としての「宅配ビジネスモデル」として生まれ変わります。
 地域に複数店舗を経営する企業などが個々のSS単位で行っている採算の合わない「灯油配送」も「受注センター」の開設や「配送センター」を設置して一元化による業務「集約化」をはかる事で劇的なコストダウンが実現し、高収益ビジネスに変化するという事実はすでに全国各地の「配送センター」の成功実績でご理解いただけるはずです。
 「協業化」については、すでに各地で灯油配送センターが開設されていますが、設立時から私共も協力させていただいた、福島県会津若松市の石油販売業者6社が共同で開設した「会津灯油配送センター」などは既に独立した企業として10年経過しており協業化による経営効果の成功事例として挙げられます。いずれにしても「協業化」と「業務集約化」は現在灯油ビジネスのキーワードとなっています。


5.業務の「協業化」と「集約化」にあたってのポイント

 灯油配送ビジネスにおける「協業化」と「集約化」に関する経営効果は認識できても成功させるためには、幾つかのポイントがあります。特に業者間における協調性が難しいという現実です。なにより、同一マーケットで競い合ってきた業者同士が突然「協業化」といっても、企画立案時における協調性を詳細の合意に至るまで詰めるまでには難しい現実もあるわけですが、限られたマーケットですから大局的な見地に立って大人の話し合いが必要です。一方、最近では、元売販社、大手広域ディラー、さらにはフリート系大手までが「灯油ビジネス」に対して積極的姿勢を強めており、異業種参入のホームセンターなどとのコラボレ-トによる「配送代行」から、他地域の「配送過疎マーケット」への取り込み、さらには、WEB環境を活用しての広域展開など、独自性のあるビジネスとして生まれ変わりつつあります。それらの先進的なビジネスモデルはもうすぐ、ガソリンスタンドを起点とする新たな石油ビジネスとして業界の脚光を浴びることになるはずです。さらに過疎地域への「安定供給」という見地からもこれらの取り組みが全国各地で成功させる事が大切だと思います。とにかく「灯油ビジネス」の採算性を確保することで、「安定供給」の課題も解決するはずです。


6.システム構築の具体的手法と「予算」

今後、「協業化」を成功に導くためには幾つかのポイントがあります。
協業化参加企業ごとの「請求書発行」のための各社データの取り扱い。
  (系列毎に異なる計算センターのデータ転送のためのレイアウト調整対応)
「灯油配送システム」の導入で、CTI受注センターを設置しての受注業務省力化、
ハンディPOSによる配送売上データ処理業務の省力化、
データベースマーケティングによる機動的な市場分析と細分化対応。(車検・保険販売)
灯油以外の新たな「宅配商品」ビジネスの模索と展開、(天然水・食料品・米など)
採算性を明確にするため協業化の「配送センター」はなるべく独立した組織(法人)として運営する。
新規顧客の拡大を目指し「配送センター」の顧客として取り込むことで、管理費負担を軽減する。
「灯油配送センター」の宣伝告知手法を工夫する
最近ではホームセンターなどの競合業種とも代行配送委託業務などで連携して取り込むケースも増えている。
システムのネットワーク化により配送エリアを拡大する積極広域展開は特に有効。
WEB環境を活用しての拡販(携帯電話などからのWEB受注)を工夫する。
WEB受注により受注業務の省力化を図る。
などを特に工夫するとともに、ローリーなどは既存の設備を使用することで、システム初期導入経費も300万円程度に抑えながら可能性のある新たな「宅配」ビジネスモデルとして立ち上げることが可能です。


7.「灯油配送」は、ガソリンスタンドにあらたなビジネスモデルの可能性を示す

 「灯油」という商品は同じ商品でありながらガソリンスタンドの店頭販売を中心とする商法と「宅配」という業務オペレーションを駆使する場合では全く商売のオペレーションが異なるという事を改めて認識しておく必要もあります。手数が掛る分だけ「デリバリーサービス」としての工夫によりさらなる付加価値を生み出せる余地があるわけです。特に最近では消費者の「配送コスト」に関する認識が定着してきましたので、10円以上/㍑、特殊な配送ケースでは15円/㍑の値取りも可能な市況が整備されつつあります。
 システムを駆使したコストダウンによりさらに収益効果を向上させる手法もあります。今後は灯油以外の配送商品アイテムの開発などにも応用展開できる新たな宅配ビジネスとしての可能性が見えています。これからの時代は、灯油配送ローリーを活用してという限定された視野に立つのではなく、冬場に蓄積された「灯油配送システム」の顧客管理データベースを活用し灯油のオフシーズンに向けてのビジネス展開の工夫にいかに生かしていくかという点を工夫することも大切です。社内に存在するベテランスタッフなどの人的経営資源を見直し掘り起こすこともポイントとなるはずです。
 ガソリンスタンドのフィールドを飛び出して色々なビジネスが開始されていることはご承知の通りです。その場合、もっとも大切なことは地域性や企業としての独自性、強みをどのように発揮できるかという事だと思います。

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