石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第7回 実践、「灯油配送を起点とする外販ビジネス展開」 ~その1

 「桜の季節が到来する」ころまで、肌寒い日が断続的に続いたため、昨シーズンの灯油ビジネスは約半年間にわたり大きな収益貢献があったはずです。多くのSS経営者が、灯油は石油ビジネスの「孝行息子」であることを改めて実感したことでしょう。後ろ向きな話題ばかりがあふれる石油ビジネスの中にあって、「灯油配送」は依然として一筋の光明を放っています。何を隠そう、私自身が灯油が持つ特殊性と重要性について今さらながら驚かされています。前月号に引き続き、灯油を中心とするエネルギービジネスの原点と、今後の新エネルギービジネスの展望について考えてみたいと思います。


1.新たな収益を生み出す「灯油配送ビジネス」の特性と今後の可能性

 人々の生活に密着した「灯油」は、他の石油製品と異なり、「配送」という味付けを加えることで、次世代エネルギービジネスを展開する上でも、大きな可能性を秘めた高収益商品に変化します。
 ホームセンターやセルフSSの店頭で販売する「店頭灯油」と、配送業務を伴う「配送灯油」は販売オペレーションがまったく異なることから、昨今は、「別の商売」として位置付けている企業がほとんどです。
 その背景には、「次の時代」を見据えてSSを起点とする新たな「宅配ビジネス」の可能性を敏感に感じ取っていることや、次世代エネルギービジネスの展開を視野に入れ、打開策を模索する動きが活発化していることなどがあります。
 ここにきて、「灯油配送ビジネス」は、SSを起点とする次世代ビジネスの展開に向けた「時代の変わり目をつなぐもの」であるという見方が広がってきたのはぜひ押さえておきたいところです。また、最近とくに注目されるのは、一般消費者が「配送コスト」を認識し、受け入れていることです。
 「店頭灯油」「配送灯油」このふたつの取扱商品は、「商品コード」についても明確に区分し設定することが今や常識となっています。全国的にみても、灯油の配送料は、店頭販売と比較して、l 7~10円程度の「値取り」が見込める環境整備が進んでいます。
 この事実は、SSビジネスとして安定的な「油外商品」が生み出され、市場にすっかり根付いていることを意味します。例えば、「配送灯油」を毎月100kl販売すれば、70~100万円の「油外収益」が毎月稼ぎ出されることになります。
 言い換えれば、「灯油」は、将来のSSビジネスの可能性として、「宅配サービス」という新たな付加価値を生み出したのです。以前は、請求書に、単に「灯油」と表記されていたものが、こんにち「配送灯油」と明記されるようになり、消費者も負担するコストについて理解しやすくなりました。
 今後の課題は、「配送サービス」の中身をいかに充実させられるかだと思います。「顧客管理データベース」を活用した受注体制をもとにして、定期配送の仕組みの確立のほか、柔軟な価格対応の在り方について、さらに、配送スタッフの質などが問われることになります。
 そのためにはむろん、「配送システムの活用」が必須です。


2.「灯油購入意識の変化」に販売業者がどう対応するか

 消費者がホームセンターやセルフSSの店頭で灯油を購入する機会が増えるにつれ、それに伴うわずらわしい作業と掛かる時間が、皮肉にも、消費者に灯油配送コストを認識させることになりました。
 石油販売業者の間でも、配送コストを価格転嫁する自信が持てる環境が整ったことから、今後計画している「SSを起点とする宅配ビジネス」の可能性がさらにふくらんだと踏んでいるようです。私も、長年にわたり唱え続けてきたことですし、まったく同感です。
 「店頭灯油」と「配送灯油」との間で、仮にl 10円の価格差があったとしても、18l 入りのポリ缶で180円の価格差しかないわけですから、タバコ代にもなりません。
 危険物である灯油をマイカーに積み込むことにより、走行中に車内にこぼすことがないとは言えません。あるいは、マイカーの燃料代を費やして、寒空の下で灯油を買いに行くことをためらう気持ちが沸き起こるのは人間の心理を突いたものです。
 こうした現実と、「180円の配送コスト」を比べて、消費者はどちらかを選択することになるわけです。そこで賢い消費者がどのような行動をとるかと言えば、すでに答えは出されています。
 このことは、何も石油業界における「灯油」に限ったことではありません。例えば、食品業界では、「ケータリング」サービスという新たな分野で急成長している「ヨシケイグループ」の事例があります。
 私がかつて、燃料油のパトロール給油で携わっていた大規模「発電所建設」のプロジェクトで一緒に配送作業を行った経緯もあり、その折、あの「ヨシケイ」の原点となるビジネスフォームの可能性に気付き、ともに熱く語り合ったことがあります。
 「デリバリー(配送)サービス」という起点で考えると、地域性や企業特性を前提としていろいろなビジネスモデルが浮かんできますし、SS業者にとって最大の課題である「ビジネスの創造性」を豊かにし、それをつかみ取るチャンスが今まさしく到来しているのだと断言できます。
 デリバリーサービスの商品とマーケットは多様で無限ですから、さらにビジネスの可能性はふくらむはずです。「雪ん子」の使い手でもある九州の「新出光グループ」が、「食品宅配ビジネス」を手掛けているのもすでに報じられている通りです。
 また、ほとんどの薪炭系業者が灯油ビジネスが抱える弱点(季節需要の増減)を補うため、夏場に「天然水の宅配ビジネス」などを積極的に展開中であることもよく知られたことです。


3.次世代エネルギービジネスと元売の取り組み

 すでに各マスコミでも報じられている通り、石油元売各社による太陽電池部材等の生産強化は、かなりの速度で進んでいます。
 JX日鉱日石エネルギー(旧新日石)は、太陽電池の主要部材であるシリコンウエハーの本年度の生産量を対前年比17%増産し、年24万kW分を見込んでいます(国内外のメーカーに販売する)。
 出光興産は、太陽電池を電線でつなぐ新素材の樹脂を開発し、中継装置の保護用部材の開発と、太陽電池による太陽光の浸透率を高める電極保護材を手掛けています。液晶パネル向けと合わせて、2015年度には全世界で50億円の売上高を目指しています。
 コスモ石油は2012年度の事業化を目指し、太陽電池向けの多結晶シリコンを開発中です。昭和シェル石油は約1000億円を投じて、宮崎県で年間90万kWの太陽電池の新工場を建設中です。
 石油元売による太陽電池を中心とする新たな市場は大きく広がろうとしており、片や、国内の燃料油販売数量は今後かなりのスピードで減退傾向を描くことが予想されています。
 これまでSS店頭における「ガソリン販売」を中心として行われてきた「元売主導」のエネルギービジネスは、ハイブリッドカーやEV(電気自動車)の出現により大きな節目を迎えています。加えて、ホームエネルギー分野は、ソーラー関連等にシフトするという流れが生まれており、元売各社の「中期経営計画」の人的資産の活用の方向性などでも、今後なお一層強化されることが明らかです。


4.現状の経営規模や業態を問わない今からでも本格展開できる「灯油配送ビジネス」

 読者の皆さんは現在、SS特約店・販売店として石油ビジネスに従事している方が多いと思います。
 一概に「ガソリンスタンド」といっても、経営形態、地域性と市場規模、さらに、立地条件によっても大きな影響を受けますから、ビジネス展開に関してそれぞれの企業が異なる考え方を持つのは、むしろ当たり前のことです。自身が置かれている経営環境にハンディキャップを感じている方もいれば、逆に、優位性があると感じている方がいるのも別段、不思議なことではありません。
 しかし、「灯油配送」というビジネスモデルは、「SS店頭」以外の場所で展開されるわけですから、それら諸々の条件にまったく左右されません。これが「灯油配送」を成功させる上で最大のポイントとなるものです。
 揮発油税や軽油税もありません。運転資金も少なくて済みますから、資金力の有無も関係なく、ましてやキャッシュフロー(現金収支)にも貢献します。こうした優位性を持つことをまず最初に認識しておきましょう。
 大手であろうが家業SSであろうが企業規模にかかわらず、事業展開ができるわけです。また、地域密着型のビジネスにより「小よく大を制する」可能性が増すのと同時に、次世代のビジネス展開に不可欠となる「顧客管理データベースの構築」と、さらにその先にある「新たなビジネス展開」に向けた助走路とすることができます。


5.「配送コスト」の削減と「地域特性」を見据えた「販売戦略の立案」がポイント

 灯油ビジネスに本格的に取り組み、成功させる手法についてはまず「地域特性」を見直し、有効な販売戦略を立案する」必要があります。
 と同時に、受注・配送・データ処理を始めとする作業の見直しによる「配送コスト」の削減がポイントになります。電話で注文を受けてから、ただ単に、「灯油を配送する作業を毎度繰り返している」だけでは進歩がありません。
 灯油の購入では、「ポリ缶」での購入が多い地域と、ホームタンク設置率の高い地域があります。ホームタンクを設置する戸建て住宅では、灯油を大量に消費しますし配送が中心です。その際、販売業者に何より問われてるのは配送サービスの「質」です。
 先進的な石油販売業者は、(灯油配送を起点とする)外販配送体制の「顧客満足度」(CS)向上を促すため、新たな配送モデルの開発にすでに取り組んでいます。納入条件やホームタンクの設置場所などに問題があり、配送時に手間が掛かるケースなどでも、細分化したコスト(単価)設定を消費者に理解していただくなど、サービスの質を向上させる努力を重ねています。
 また、専用システムを駆使して「単価の期間設定」「消費量」(ボリューム・インセンティブ)、「配送条件」(運賃)などの価格・条件設定をきめ細かく行うシステムが構築できれば、元売の「新価格体系」よろしく、しっかり値取りすることができるようになります。
 現在進行中の配送サービスの充実や、灯油以外の商品アイテムへの対応など、消費者ニーズに応じた販売業者の創意工夫を凝らすことができます。そのようにして、配送システムに関しても、新たな機能の追加・開発が求められています。弊社の「雪ん子」は、ここ数年、バージョンアップを繰り返しており、今後も消費者への提案という形で改良を加えていく方針です。


6.次世代エネルギービジネス

 依然として、SS業界における販売競争は熾烈をきわめています。現下の状況を踏まえて考えれば、「当面の生き残り策」が最優先されるのは当然のこと。とは言うものの、ある有力なSS特約店オーナーの言葉を借りれば、まるで、「タライの中で競争している多くのアメンボを乗せ、そのまま、滝つぼに落ちていくような状況である」と見ることができます。
 確かに「ガソリンスタンド」という業態は、非常に困難な局面を迎えていると言わざるを得ません。なかには、自動車ディーラーとか、不動産やハウジング部門を持ち、複数の収益構造を確立する有力業者も多いわけですが、だからといって、一般の石油販売業者に対し、「そのようになれ」というのは、無理な話です。
 今後、それぞれの石油販売業者が将来の生き残りを賭けてどのような道を選ぶのか、転業や廃業までも含めた選択肢を迫られる時代が到来しています。
 最近、私どもが訪問する先では、「灯油配送」を切り口にして住宅設備販売などに取り組みながら、「リフォーム事業」「宅配ビジネス」に力を入れるケースが増えてきました。これらは、現状のSSにおける車両管理などを中心とする「油外販売」などの店頭販売オペレーションとはまったく視点の異なる、新しい切り口でのビジネスの模索だと受け止めています。
 その他、ここではまだ紹介できていないニュービジネスのヒントやアイデアがたくさん転がっています。そういう現実を目の当たりにした時、「石油業界もまだ捨てたものではない」と率直に感じます。
 次号から、最新ITシステムを駆使した「灯油配送ビジネス」の具体的手法と、構築予算などについて公開する予定です。

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