石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第10回 実践、「灯油配送を起点とする外販ビジネス展開」 ~その4

曲がり角のSSビジネス
  改めて消費者のウォンツとその可能性を探る

 「石油」を中心とする既存のSSビジネスは今後エコカーの普及等や次世代ホームエネルギーなど、構造的な変化により大きく変化するはずです。
 不景気といわれて10数年以上が経過した現在、他の産業を見わたしても消費者の生活傾向などにより販売動向が大きく変化していることはご承知の通りです。
 例えば、スーパーや百貨店の売り上げ低迷には歯止めが掛らない状況が永く続いていますが、一方ではWEB通販やコンビニ業界の売上は着実に伸びており明暗を分けています。
 問題は、不景気だから売れないのか、景気が回復すれば再び売上が伸びるのか、判断が難しいところです。しかし、消費者ニーズ以前に「ウォンツ」を先取りし、満たしているビジネス業態は堅実に成長しているという事実もあるわけですから、この販売動向の変化と格差拡大の課題はこれまでの既存業態における流通体系や経路、販売手法などについて問題があると考えるのが妥当でしょう。したがって、現在のSSの業態においてもエネルギーの構造変化だけでなく、仮に景気が回復したとしても、なんの工夫もなされなければ、このままでは売上や収益の伸びが期待できないと考える経営者の方が増えています。今迄の経営と販売手法を改めて見直し、次世代のSSビジネスを考えながら「生き残るための手法」を改めて模索する必要があるはずです。
 今回は、辛口にSSビジネスの過去と現在を見つめ、今後、消費者がSS業界に求めるウォンツを改めて探るとともに、SSビジネスの基本である灯油配送を起点として今後のビジネスを「先取り」する「宅配ビジネス」についての可能性について考えてみましょう。


1.系列強化と自由化の狭間で苦しむ、SSビジネスのあらたな方向性

 我が国におけるSS(ガソリンスタンド)ビジネスは戦後に生まれた最初のフランチャイズチェーンであるともいわれます。ここであらためてフランチャイズチェーンの定義とは(企業本部が加盟店に対し、商号・商標の使用を許諾するとともに商品やノウハウを供与し、あわせて一定地域内における独占的販売権を与え、その見返りに特約料を徴収するという小売形態。また、その加盟店)。ということです。企業本部という言葉を「元売」に置き換えてみると、改めてSSは「フランチャイズビジネス」であることが再認識できるはずです。しかし、最近ではすでに「一定地域内における独占的販売権を与え」という言葉が死語となっているのは御承知の通りです。商号・商標の使用権を与え見返りに特約料(ブランド料)を徴収するという手法も現在の石油業界において「新仕切り体系」下の「ブランド料」として存在しているわけですが、今となってはその価値観が薄れていることは明白です。
 かつて、ほとんどのSSは元売(本部)が企画する全国統一「キャンペーン」などの企画に乗せられ同一商品の販売数を競い合ったものです。あまり余計なことを考えずに工夫もせずに「本部に与えられた商材を数多く売る」特約店(販売店)が優良店であったわけですが、このビジネス認識は最近でもあまり変わっていないようです。さらに過去においては「規制」により保護されていた業界が「規制緩和」の先陣を切って自由化され、「品質格差のない商品(石油製品)」を販売競争しているわけですから行きつく先は「価格競争」だけとなり、今日の様相を呈しているのが現在のSS業界というわけです。
 画一的な経営環境に慣らされてきたSS業界にとって、今後は地域性や自らの企業特性を前提にしてビジネスの視点を広げ「工夫」や「創造性」を発揮すべき時代が到来しています。
 すでに全国の大手ディラーや元売販販社等でスタートしている「灯油配送」を起点とする次世代ホームエネルギービジネスの展開や新たな「宅配ビジネス」の工夫は、今迄のSS店頭フィールドビジネスから脱却した新たな視点での可能性を示しています。


2.消費者のライフスタイルの変化、そして、いまSSに求められるビジネスとは

 私自身、石油ビジネスで失敗や成功を重ねながら生きてきました。そして現在では、全国各地を飛び回りながら本当に多くの企業の個性あるSS経営者の方と面談し石油流通関連のソリューションビジネスを行っています。
 そんなわけで、あらためて客観的にSSビジネスを見渡すと色々なことが見えてきます。SSビジネスにおける成功の秘訣、そして失敗の原因などについても助言したくなるような事も増えています。そこで、今回はSSという業界を踏み越え、消費者の視点に立って異業種の動向なども含めながら考えてみましょう。
 少し前まで小まめに主婦がスーパーで買い物をするという行為は当たり前でした。しかし、共働きの増加や人々のライフスタイルの複雑化により、日常生活が忙しくなったため、便利なコンビニや通販などを利用し、週に何度かスーパーに行くという家庭が非常に多くなっています。ですからスーパーの売上が減少してコンビニの売り上げが増えているわけです。スーパーがお客様に来店してもらうために色んなイベントを企画したり、ポイントサービスや安さに訴える手法の販促に力を入れている間に、コンビニは、どうすれば顧客が喜ぶか、どんな物が売れるのかを科学的に把握し、流通や時間帯など消費者志向を前提としたマーケティングとフィールドテストによる工夫を重ね、値下げしないでも定価で売れる有効な商品構成とビジネスの仕組みを確立したわけです。
 昨今では日本人のライフスタイルも変化し、かつては豊かさのシンボルであった「車」も今では資産として保有する時代ではなくなりました。そんな消費者のSS来店の動機づけとしては、車の燃料を入れるためにわざわざSSに出向くケースは少なくなり、来店の動機づけも変化しています。さらに大都市部では交通網が整備されており、「駐車料金」なども高額なことから車を所有し維持するためのコストが掛りすぎ、「若者の車離れ」が顕著となっているのも現状です。今後は生活の「足」として「車」を使用するとなれば必要頻度に応じての「カーシェアリング」や「格安レンタカー」の利用でもいいわけですからSSビジネスを取り巻く消費者の傾向は当然のことながらさらに大きく変化していくと予測せざるをえません。
 今後は地域性による消費者マーケットの変化を前提にSSビジネスを考える必要があります。大都市部と地方都市、そして過疎化が進む地域などそれぞれの地域性やEVなどの急速な普及により、「車」を中心とするSSビジネスは大きな変革の時代に入ったといえます。
高齢化が進む地方における灯油などのホームエネルギービジネスに対する消費者の「ウォンツ」と宅配ビジネスの可能性はまだまだ根強いものがあるともいえます。
 今後はSSが立地する地域性や企業としての「独自性」をどのようにして発揮し生かしきることが出来るかがポイントとなるはずです。


3.SS経営者の「ビジネスダンディズム」と大きな「勘違い」

 SSビジネスは昔から「車」を中心とする設備産業であり本来「待ちのビジネス」ですから、お客様が車で来店しなければ販売の機会が発生しないという課題があります。これまで、「油外収益向上」を実現するために、まずは来店の動機付けとして主要商品であるガソリンを安く売ることで集客をはかり、次に、顧客来店時に店頭における「油外拡販手法」を提唱するSS周辺ビジネスが活況を呈してきた傾向があります。結果として主要油種の利益低下を招きSS全体の収益性までが悪化している企業が増えていることについては憂慮に堪えません。従来の「まずは、来店客ありき」という考え方については、SSビジネスの特性としてやむを得ないことかもしれません。しかし、この考え方がまさに「安売りスパイラル」ともいえる経営悪化の悪循環を招いている事も事実でしょう。油外収益が向上しても主要油種の利幅は悪化しますし、拡販のためのノベルティ商品(モノくれ商法)や店頭販売スタッフの人件費コストなど業務負担と経費が増えるばかりです。一時的にはある程度の販売成果を上げた優秀なマネージャーでも継続してその力を発揮できるという保証はどこにもありません。それを恒常的にキープするためのモチベーションと努力負担がさらに要求されることは、SS最前線で仕事をしてきた私自身の経験でよくわかります。これが、SS店頭販売オペレーションの最大のジレンマともなっています。
 SS側が販売したい「油外収益」といわれる商品やサービスと、「その時点で」消費者が必要としている商品やサービス内容が一致しない限り安定した「油外収益」は確保できません。かつて、あるセミナーを聴講してきた某老舗特約店の若手経営者が、「ガソリンは儲からなくてもよい。来店客を増やし、油外収益で利益を出す」と息巻いていたことを思い出します。あろうことか、セールスルーム内にスロットルマシンを設置して、「7が揃えば、その日に入れたガソリンはタダにする」というわけです。それにしても、自分の主要な「飯のタネ」であるガソリンをタダにしてまで・・・、頭を冷やして考えれば「タコが自分の足を食べながら生き残りをはかる」ような、何かビジネス感覚がずれている経営者が増えているような気がします。元売から派遣された経営幹部も「そんなにスロットルマシンにこだわるなら、パチンコ屋でも開業したら・」と呆れていましたが、本来の石油ビジネスの「ダンディズム」だけは決して忘れないようにしたいものです。


4.SS業界が売りたいものと消費者が求めているサービス

 ここ数年、SSのセルフ化が進行しましたが、ここにきて消費者がSS業界に求めているものがあらためて問われているようにもみえます。
 今後はSS側が提供するサービスや売りたいものと消費者が求める欲求(ウォンツ)の内容がSSの立地するマーケットやその時々の消費者のウォンツに一致しているのかが問題となるはずです。特に同一商品の販売を競いあう従来の画一的なビジネス手法では基本的な打開策は見えてこない事を前提に考える必要があります。
 最近、私の住んでいる地域に向かい合いでセルフSSがオープンしました。地元業者が淘汰されていく中で新設の素晴らしいスタンドのオープンですから目立ちます。
 一方は元売直営の完全セルフの計量機を何台も揃えた立派な大型セルフSSで洗車専任のスタッフによる質の高い「洗車サービス」を行っています。そして片方は大型ショッピングセンターに併設した商社系の「セミセルフ」と呼ばれる給油作業のみスタッフが行う業態のSSで、洗車機や灰皿清掃などのサービスもありません。しかも計量機は6台だけです。そんな二つの新設SSが向かい合いで同一単価を掲げて販売競争をしています。
 消費者の立場で観察してみると、お客様自身が給油だけの場合と洗車が必要なケースでSSを使い分けているようです。
 私の家内などもその時々のケースに応じて使い分けています。
 給油だけのケースでは「セミセルフ」を選択しているようです。理由としては給油専任スタッフが素早く給油作業を行う為時間が掛らないという事が大きな要因となっています。
 洗車が必要なときは専任スタッフのいる大型セルフに行くという具合です。
 よく観察してみるとセミセルフの給油顧客の回転率は二倍以上の効率ですが、当然、油外収益はゼロです。
 外食産業では「スカイラーク」などの業態はすでに姿を消して、店舗名や業態を変え内容も細分化されています。
 消費者によるSS選択も外食フードサービスにおける、フォーマル、カジュアル、セミカジュアルなど立地条件や客層などによりセグメント化(市場細分化)の時代に突入しているのかもしれません。


5.今後のSSビジネス

 手詰まり感が見えてきたようにもみえる「車」を中心とするSS店頭販売オペレーションですが、一方、視点を灯油配送を起点とするホームエネルギーに移すと全国各地の有力特約店ではすでにソーラーなどの次世代エネルギーに向けた展開に着手しています。
 「灯油配送」がSSの次世代に向けてのあらたなビジネスマーケットを開拓する予感が強まっています。今後は従来のSS店頭ビジネスと外販ビジネスは明確に区分されてくる予感がしています。
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