石油流通~その先の未来へ  「お客様の喜びが我が喜び」

第12回 SS経営者に今「迅速な意思決定」が求められている


 21世紀に入り早くも十年が経過しました。この間、石油業界を取り巻く環境は大きく変化しましたが、あなたの会社の経営はどのように変わりましたか?
 これから先のガソリンスタンドビジネスはさらに、みずからに大きな変化を求められる時代が到来するはずです。今迄の十年を総括するとともに、これから始まる変化の波を先取りし、さらに次の時代に向けての布石を打つための計画立案と具体的な行動が求められています。
 私自身、全国の石油流通企業を巡回しながら、感じたこともたくさんあります、そして多くの経営者の方から頂く課題も見えてきました。
 ここで、改めて「お客様のよろこびが、我がよろこび」と題した本年のシリーズ総括を行いたいと思います。


1.SS(ガソリンスタンド)ビジネスの環境変化

 閉鎖や淘汰が進行したこの十年間の石油業界では、系列の関係が希薄になってきました。かつて系列の忘年会や新年会では「元売と特約店」、そして「特約店と販売店」は「一心同体」と異口同音のようにも市売りや業界代表社が挨拶していた時代もあったわけですが、最近は本当に難しく世知辛い時代になりました。
 元売は特約店の経営状況を常に注視し、特約店は販売店の経営状況に疑念を抱かざるを得ないような厳しい経営環境が発生していることは嘆かわしい事です。しかし、今後も厳しい現実は現実として受け止めながら企業経営を進めなくてはなりません。
 特約店は元売からの「仕切り体系」とその対応に頭を悩ませ、販売店は特約店からの「仕切り価格」に不満を持ちつつ、それぞれが過去の取引の経緯などを踏まえながら不況下で頭を痛めつつ局面の打開と今後の商売の方向性を模索している、まさに「胸突き八丁」ともいえる大詰めの局面を迎えているわけです。
 これからは、「特約店」や「サブ店」などの立場にかかわらず、それぞれ個々の企業が持てる経営力と特性をフルに発揮しながら時代の変化に機動的な対応をはかることで「次世代エネルギービジネス」への展望が見えてくると思います。
 すでに「系列」という力に依存できる時代は終焉しました。それぞれの企業が経営規模や立地条件などを生かしながら自らの力と創造力を思う存分発揮すべき時代が到来しています。


2.売れない時代を迎え、業態変換を求められている「ガソリンスタンド」

 SS(ガソリンスタンド)は石油エネルギーの中でも、特に「自動車用燃料販売」を基軸とする「待ちのビジネス」ですが、最近では、「SSのみの商売で利益を出すことは難しい。」という声が聞こえてきます。
 しかし今後の消費動向はEVの普及などもありさらに一層の「減販の時代」が到来することは明白です。
 ですから、今迄のようにSS店頭販売だけに固執してなにがなんでも「拡販手法」という単純な拡大的経営思考だけではビジネスの将来展望を拓くことが難しい時代となるはずです。
 今後は従来の「ガソリンスタンド」という業態そのものについて、抜本的に考え直す時代が到来しているといえます。
 これからは改めてSSという業態を見直しながら「次の時代」を見据えつつ消費者に求められるビジネスモデルを再構築する必要があると考えます。
 当面の経営課題は課題としては最大の販売努力が必要なことは確かなのですが、同時に今後の石油エネルギーの動向などを考慮し、新たな方向性の模索から業務転換という「第二創生期」ともいえる難しい局面を迎えていると言わざるをえません。
 これから始まる変化の時代を「ピンチ」と考えるか、「ビジネスチャンス」としてとらえるか、それはそれぞれの経営者の資質と創造性に掛っています。


3.どのようにして、「次の時代」のビジネス展望を拓くか

現在のSSビジネスを改めて見直してみると、幾つかの「切り口」があります。
 「車」をキーとするビジネスフォームのほかに、「ホームエネルギー」、「潤滑油販売」、「産業用燃料供給(パトロール給油)」、などの分野が中心となっていますが、今後はさらに「次世代エネルギー」の分野を起点として新たなビジネスフォームが派生してくるはずです。
 ここ数年をみても、「車」を起点とする分野では、「板金修理」、「中古車販売」、「レンタカー」ビジネスなどに活路を見出す企業が増えているのはご承知の通りです。
 ホームエネルギー分野の灯油配送販売はシステムの普及により販売機動力が大幅に向上しており、「宅配」を起点とする新たなビジネスモデルの模索が開始されています。
 さらにLPガス併売のSS企業などでは住宅設備機器販売や住宅リフォームから次世代ソーラービジネスまで取り組む企業が増えています。
 潤滑油の分野ではすでに一部外資系元売りが開始している「地域拠点代理店」設置を核とする専門スタッフの配置から在庫管理や受発注配送体制の充実などもスタートしており、今後さらに専門的な部門として特化する傾向があります。
 それぞれのビジネス分野で立地条件や企業特性を生かすための工夫が必要であり、成功の条件も見えています。
 いずれにしても、セルフSSによる店頭販売オペレーションの「油外収益」も頭打ちとなっている現状ですから、新たなビジネスモデルの方向性が生まれる可能性が急速に高まってきました。


4.WEB活用による石油ビジネス展開の今後の可能性

 基本的に顧客の来店を待つSS店頭ビジネスとは異なり、外部からの需要を喚起するビジネスフォームを確立するためには「コールセンター」の設置による受注体制の整備が必須です。
 電話受注時に「顧客管理データベース」をリアルタイムに連動させながら対応できるCTI機能は一般消費者向けの「灯油配送」から「新たな商品アイテム」への対応にも絶大な効果を発揮しています、さらに、多品目で荷姿も多い潤滑油販売やリアルタイムな「与信限度額管理」が必要な法人向けの大口取引などでは過去の発注履歴なども参照しながら顧客自らが商品を選択入力できる、すでに元売などで稼働しているWEB対応のEDI受注システムが有効です。
 これらの最新機能は受注業務の効率化だけに留まらず、重要な取引先との取引連携にも必須なアイテムとなっており、直売部門や販売店からの受注管理などに大きな効果を発揮しています。
 今後の石油ビジネスは「ガソリンスタンド設備」などの外形的な部分よりもむしろWEBを活用したITソリューションによる情報処理機能向上による速やかな意思決定も重要なポイントとなっています。


5.灯油配送を起点とする「宅配ビジネス」の可能性

 ここで、灯油配送システムを活用した顧客データベース構築に関する事例を御紹介しておきます。
 計算センターや自社コンなどによる請求書作成が中心のシステムだけでは、今後必要とされる「戦略的顧客管理データベース」の構築は不可能です。
 そこで、SS店頭における顧客の車両データ認識等とは異なり、多角的な視点でのサービスの提供と多様な「宅配商品アイテム」を想定した情報分析が可能な、データ活用範囲の広い顧客管理データベース構築が注目を浴びています。
 灯油配送という日常業務を消化するだけで自然に構築される強力な「顧客管理データベース」が今後の経営戦略の大きな武器となります。
 最近の灯油配送システムはすでに単なる「配送ツール」としての機能から次世代を見据えた販売戦略システムへとその機能が変化しておりその機能には特に注目が集まっています。
 石油も当の販社系企業や全国的なスーパーディラーによるWAN構築を中心とする広域展開が盛んになりつつあります。


6.「石油流通システム」がビジネスの運営オペレーションとコストを変える

 ところで、減販が現実化してきた従来のSS店頭販売オペレーションはどう変化するのでしょうか、最近は大手石油流通企業におけるSS部門の位置づけがかなり変化してきたように感じています。
 全国の企業を訪問していると地域一番店でも「セルフ化したら油外収益が厳しい、洗車と板金、それに保険くらいは少し残りそうだ・・・」などと寂しい言葉も聞こえてきます。
 結果として業界がみずからサービスを放棄したセルフ化という業態なのですが、ガソリン300㌔程度の売上ではビジネスとしての妙味が薄くなったと嘆く経営者の方が増えてきました。
 一方では、「SS部門は赤字が出なければよい、」と異業種参入や経営の多角化に挑む経営者の方も増えています。
 SSビジネスそのものに対する悲観的な見方は増えていますが、一方、一定規模を有する特約店企業などではエネルギービジネスの次世代を見据えながら本社管理業務の省力化などをはかり全社的なコストダウンをはかることで分岐点を下げ新たな活路を見出すことができる事も確認されています。
 システムを駆使し業務改善をはかることでSSの運営数が増えても逆に管理業務のコスト削減をはかることも可能となりますから、元売販社や大手特約店などではさらに統合による経営効果を推進していくはずですし、今後この傾向はさらに強化される傾向にあります。
 当面自動車用燃料油の消費量が全くゼロとなるはずもないわけですから統廃合を重ねながら経営体質の強化が進むはずです。


7.ビジネスの「リエンジニアリング」に向けた具体的手法

 企業経営を根本から変える業務再構築を「リエンジニアリング (business process re-engineering )」といいます。
 企業の提供するサービス内容、コスト、スピードなどの要素を、根本的、抜本的、劇的にプロセスから改善して再構築することです。
 システムを駆使することで情報処理技術もフルに活用して業務プロセスからムリ、ムダ、ムラを取り除き、迅速に消費者ニーズにこたえられる体制に脱皮することをいいます。
 先進的な企業ではすでに、現状の「ガソリンスタンド」という業態をエネルギー供給ビジネスとしての原点として抜本的に見直す事で色々なビジネスアイデアの模索が開始されており実行に移されています。
 それらのほとんどの企画がSS店頭のビジネスフィールドから脱却する方向にあることは注目されます。
 既存のSS顧客データを活用しながら、さらに「次の一手」に踏み込むためには当然顧客管理データベース構築が有効であることも認識されてきました。


8.変化に対応するための「意思決定能力」が求められています

 最後に、理屈は分かっているが「具体的にどこから手をつけるか・・・」、この不況下ですから石油ビジネスに限らず多くの経営者が悩んでいます。
 製造業などでは海外への工場移転なども増えています。
 しかし、SS運営は内需型ビジネスですからそんなわけにもいきません。
 過去においては、元売の指導のもと画一的な経営手法によるSS運営が中心であったSS業界ですが、今後は企業としての独自性と創造性が問われる時代が到来しているわけですから企業にとってはそれぞれのポリシーやコンセプトを明確化にすべき時代が到来しています。
 経営者にとっては速やかな「意思決定能力」も問われることになります。
 はっきり言いまして、伸びている企業の経営者の特徴は「意思決定が早い」事だと感じています。
 「機を見るに敏」であることが「勝ち残り」の必須時要件であり、『着眼大局、着手小局』も大切なポイントだと考えます。
前の記事へ 一覧へ戻る 次の記事へ